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電子美術館のQ&A

1-3 公募コンテストとアートフェアの根本的な差

二十一世紀国際地方都市美術文化創造育成活性化研究会
2016/11/30
電子美術館のQ&A

――現代美術は欧米では一軍扱いで、

日本では二軍扱いという話題のつづきです。二軍ではだめ。筆者は日本の現代アートをヨーロッパへ送り、展示する企画を行っています。けっこうな手間がかかりますが、日欧両方の事情が入ります。まず日本の画家や彫刻家で意外に多いのは、自分の作品に値段をつけたことがないケースです。これは、日欧の美術界が大きく異なる表れです。

――日本で広まっている美術展覧会の方式は、

公募コンテスト展です。コンクール方式。展覧会といえば、すぐに入選や入賞の話に進みますね。日本では誰も変に感じない公募コンテスト展ですが、その最大の特徴は検閲です。応募作品の中から劣った作品を排除し、優った作品のみ選出して公開する方式です。日本でアート展覧会といえば、この当落コンテスト方式が主流です。

――絵になっている作品、彫刻になっている作品を

市民に見せて、なっていない作品を見せないというやり方です。その利点と欠点の話は、またにしましょう。ここで問題は、公募コンテスト展の会場では作品に値段をつけて売ることはまずない点です。つまり非売品ですね。

――公募展で活動する美術家は、

自分の作品が何円なのかを考えずに長年制作し続けることになります。自作品の値段を決めていなくて、決める目安も考えないのは、公募コンテスト方式が広く行われている実態と因果関係があるでしょう。

――「それなら公募コンテスト展の会場でも、

作品に値段をつけて売るよう変えていけばよい」というアイデアが出てきそうです。実はそれは、致命的な論理矛盾になるのです。

――公募コンテスト展は、審査員の

個人的な価値観で採点して、美術品を上位と下位に区別して、下位を切り捨てる方式です。ちなみに、だから応募する美術家にとっては、何でもありではないのです。自由が束縛された制作になるでしょう。審査員に逆らったら、市民に見せることができません。間に入ってはばまれる。この部分は今は関係ない話ですが。

――値段をつけて売るとなれば、

見物客の側に作品を審査する権限が移るわけです。すると審査員がつけた順位と競合します。いわば二重審査。先につけた値打ちと売れ行き順が異なるはずで、しまいにはお客が落選作も見せて欲しいと言い出すかも知れません。当選作が全部売れたら、落選作も店頭に出そうという話になる理屈です。つまり、作品を選んで減らすと誰も得しません。

――独裁主義で動くコンテストが、途中から

民主主義に変わるわけなので、ぎくしゃくした悲喜劇が起きて当たり前でしょう。コンテスト主催者が嫌った作品が人気になったり、見物人に審査の的はずれをささやかれ恥をかいたりと、根幹をゆるがす展開もあるかも知れません。ネットの内実探りの力で、縁故の情実審査さえ表に出てしまう時代ですから。

――市民が「この作品がおもしろい」と

人だかりをつくっても、主催者が「それはつまらない作品だから長く立ち止まらないように」と、会場で指導したりして。そもそも公募コンテスト展は、一部の作品に入賞の札を貼ることで、これに注目せよと市民を指導したり誘導する仕組みです。もし会場で自由に買えたら、貼った札が裏目に出る事件もあり得るでしょう。

――「待てよ、それなら審査員をなくして、

会場で市民が審査して買えばよいのでは?」という発想も出るでしょう。それが、欧米で広く普及している「アートフェア」という展覧会です。

――アートフェアという語感には、

何となくニワカ造語的な軽さがありますが、欧米では公募コンテスト展をほとんどやめて、アートフェア方式が長く続いています。

――アートフェアは、画廊が集まった

バザーです。主催者は画廊を募集します。画廊はブース内で展示販売します。リアル店を持つ画廊だけでなく、美術グループが臨時結成しても参加できます。作品は全て売り物です。フェアとは販売会の意味です。

――日本の美術家が、自作品の値段を

想定した体験がない事情は、作品制作によって得るものは金銭でなく賞だという、人生を送っていたせいです。日本であまりにも多い公募コンテスト展と、あまりにも少ないアートフェアによって、世界と違う美術感覚が定着しています。

――日本から欧米へ現代作品を出す

展示イベントに参加する場合、落選することはありません。大半がアートフェアだからです。アートフェアの名がつかないイベントも、ほぼ同じ機能です。サイフを持った市民が直接採点して、買っていくわけです。審査員の指導や誘導がない場であり、必要としなくなっています。

――絵や彫刻になっていない、劣ったとされた

作品には、上手を目指した未熟もあれば、未来人ならわかる創造もあり、もはや審査員には線引きが困難です。欧米が公募コンテスト展をやめた理由は、発想と作風の多様化による価値の広がりだというのは想像どおりです。簡単にいえば、ゴッホ事件への反省です。(つづく)

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