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電子美術館のQ&A

1-4 ドイツで一般化し日本で特殊化する現代美術

二十一世紀国際地方都市美術文化創造育成活性化研究会
2016/11/30
電子美術館のQ&A

――欧州連合、EUを主導する最強国ドイツは、

近年ポスト・ニューヨークを目指し、未来美術の中心地になろうと動いています。世界遺産や中州を含むベルリン美術館を核とし、世界のアーティストを集め情報発信する計画です。日本が誓うよりも現実感があるのは、すでに美術が一般化している国だからです。キーワードは「一般化」。

――現代美術はドイツでは一般化し、日本では

特殊化しています。現代美術は日本で言うなれば、哲学書の位置づけです。難解でややこしいとして遠ざけられ、特殊領域でレア化する現象がみられます。地方や郡部で開催される現代アートフェスティバルの大盛況も、特殊性の突出を感じさせます。現代アートがスペシャルイベントのかたちで、市民の関心を引くのは特殊化の表れ。

――ドイツでは、市民の多くが現代美術の作品を

買います。難しいとか、わからないとかの段階ではなく、すでに作品実物を個人が所有済み。現代美術は哲学書よりも、小説や漫画コミック、音楽ソフトの位置づけです。家に作品を飾る壁や一角を設けた、アートのある暮らしが町内のあちこちにみられます。現代アートは一般化しています。

――普通の市民が現代美術に関心を持ち、

アートコレクターも多く。作品の入手計画を立て、目標の作風を普段から探している人も珍しくありません。それも作者に縁があって買うのではなく、聞いたこともない作者の作品にも食指が動くのも特徴です。お客同士の美術議論もよく始まります。人々は美術に意見を持ち、受け身でない。

――そんなドイツに日本から送った現代作品を並べると、

「この作家のテキスト情報が欲しい」「作家のサイトを知りたい」とリクエストが来ることがあります。こちらから時々、開催中に作家情報を臨時編集して渡しました。ローカルな場末みたいな片隅のコーナー展示では、業界人が偵察に来て作品貸与の話がまとまったことも。

――そんなドイツのギャラリーは、

現代アートの小売り業たる存在です。ギャラリスト(画商)は店員の役割。販売で当てようと、未知の美術家を探しています。ギャラリストはオールラウンダーでなく、守備の得意不得意はあるようですが。よく分かれるのは、サブカル系の是非です。

――ドイツのギャラリストは、後ろ盾がある美術家は

むしろ望まないようです。価値が定まっていると、すでにうま味は失われたと考えるのかも知れません。ギャラリスト自身が新人を見つけようと、先見の明を誇る面もあります。常に美術を探す競争の空気がドイツ。

――日本からドイツへ新人を送り込む時、偉さを

保証するのは得策ではないようで。未知数であることが現地でのハンデともいえないから、日本側としてもハクをつける飾りつけは不要でした。それも当たり前の話で、作品を見れば内容をつかめるから、内申書重視は不合理でしょう。

――ドイツの鑑賞者は買う視点で見るから、

作品は何でもよいわけでもありません。買う方向で話が進んで、結局買われないケースもけっこうあります。所有する立場から、作品をシビアにチェックされます。

――たとえば、日本によくある絵はゆるキャラ型

です。ゆるキャラがモチーフの絵の話ではなく、主張がゆるくてささやかな絵のこと。日本国内では目の覚めるような押しの強い絵よりも、やんわり引いた絵が定番です。ひかえめな人柄を思わせるので好感度が高い。しかし、欧米で売れた試しはありません。ドイツでもアメリカでも、ひかえめであることに価値はなく、はっきりと主張する作品が吉。

――日本国内ではアールブリュットに

かこつけた素人っぽさや、何でもない平凡な美術作品が長く流行っているようですが、ドイツでは逆です。プロ指向、優れもの指向、特別製指向です。「俺が俺がと主張するアートは嫌いです」の声が圧倒する日本とは真逆。そうなる理由は、見るだけでなく買うからでしょう。「うちの子にも描けそうな絵は買わないよ」という本音がドイツ。

――それらに対して日本ではどうか・・・という話になると、

かなりの部分で正反対かも知れません。その結果なのか、日本で多いのはレンタルギャラリーです。有志たちに貸し出す多目的イベントスペース。不動産貸付業ふうの街のアートギャラリーです。

――日本では、お客は見るだけで買わない

前提で全てが回ります。ギャラリストが美術を売り込もうと、意気込む空気は希薄です。めったに買う人がいないから、もう美術作品に期待しない。販売技術も問われないから、売る言葉を磨くこともない。ともに美術に関わりながら、「関わる」の意味が日独で違います。

――日本で美術を買う主な目的は昔から、

セレブの資産運用と投資です。世界の超高額アートが動きます。国民も同様で、バブルの1980年代末のアメリカ発シルクスクリーン版画やオフセット版画の大ブームは、ローン支払いの背伸び買いでした。ドイツ国民にそうした投機意識はなく、日本のような高値では買いません。

――こうした特殊化の表れが、

過疎の町おこしと抱き合わせた現代アートフェスティバルだと気づきます。「初めまして、現代アートと申します」を延々と繰り返して、何十年も日常化しないまま。特殊化と一般化の差があるという、日独現代アートの一席でした。(つづく)

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