スキー100年目の革命Q&A

02 カービングスキーは簡単に滑れる


1 そんなに簡単だったら、今までのスキー板は価値がなくならないのか?

現に、カービングスキーが主流の座について、旧式スキーは生産終了しました。4年ぶりにスキーショップをのぞいてみれば、陳列光景の異変に気づくでしょう。あの見慣れた細い板は存在せず、トップとテールがふくれた板ばかりが並んでいます。


2 ビギナーが多用する、ずらしながら回るターンが、なぜ簡単になるのか?

サイドカット半径が小さいと、雪によく引っかかって食いつくからです。少しの角づけ(船のローリングと同じ横に転がす動き)で、トップとテールの張り出しが雪に刺さるように切り込みます。すると板がスリップしたり流れにくくなって、思い通りに曲がっていくのが簡単になります。


3 旧式スキーの場合は、そうはいかなかったのか?

旧式スキーは形状がずんどうなので曲がりが緩慢なのは当然ですが、ならば大回りが得意かと言えばそうではありません。雪に食いつかず、アバウトになでて浮遊し、非常に不安定だったのです。ビギナーは大きく回ろうと思っても、ぬれた道をスリップする車のようにハンドルが利かず、あげくに板が直線的に走って人は置いて行かれ、後に倒れました。ひんぱんに転ぶのが旧式スキーの特徴でした。


4 カービングスキーだと、転びにくいのはなぜか?

ハンドルとブレーキがよく利くからです。特にブレーキの利き具合は別世界で、止まろうとしたのに止まれない転倒は激減するでしょう。旧式スキーでは、止まるのに力と技術を要しました。勝手に走って止まらず、転んでやっと止まる暴れ馬ぶりに困っていた人が多いのです。スキーをやめてしまう理由は「うまく滑れないから」に決まっていますが、実は「恐かったから」が多いのです。


5 スキーはスピードが出て、当たり前にも思えるが?

ビギナーにとって旧式スキーのスピードは恐いものでしたが、それは時速何キロ以上が恐いのではなく、勝手に走って止まらない制御不能が恐かったのです。一度上がったスピードが二度と下がらないから、あれほど悩んだのです。スピードが上がって上がって、どこまでも上がって、立っていられずにしゃがみこんで転倒する、そんな暴走が旧式スキーの駆け出し練習では滑るたびに起きました。


6 カービングスキーなら、スピードがそこまで上がらないのか?

スピードを「一定に保つ」のが容易になり、自分で速くも遅くもできます。カービングターンで切って滑れば速くなり、スキッディングターンでずらして滑れば遅くなります。特にずらす場合に、速め、中ぐらい、遅めを調節して一定スピードを保ちやすく、練習時間が暴走と転倒に明け暮れずに、楽しく滑れます。また、リフト乗り場で止まれないなども起きなくなっています。


7 そう言えばなぜ、リフト待ちの列に衝突するスキーヤーが多かったのか?

旧式スキーの大きいサイドカットが原因の制御不能、つまり暴走です。スキーで急停止するには、自動車のスピンターンと同じで、板の向きを急に変えて、雪の上をずらしてひっかきます。伸び上がって板をヒョイと90度回し込んで着地すれば、ザーッシュと一気に止まります。しかしずんどう板だと、とっさに回し込むエネルギー源が見つからず、前方の危険がわかっていながら動くに動けない場合が多かったのです。


8 リフト乗り場近くの斜面は十分ゆるいのに、なぜ暴走してしまうのか?

乗り場近くの緩斜面に来ると、スピードが出て体が遅れて後傾ぎみで、足も疲れて神経も集中しにくいからです。気合いを入れて力強く回す必要のある旧式スキーは、コントロール不能で勝手に突き進みます。本人は暴走列車の乗客のように運ばれ、激突か脱線して止まるのが旧式スキーのよくあるパターンでした。


9 ビギナーが旧式スキーで止まることは、それほど大変だったのか?

しかもビギナーに限りません。84年3月、ヘルメットをつけた女性競技者が大回転の練習コースで止まれず、雪に尻餅をついたまま、しかし転倒もせずに、どこまでも滑り続けて、リフト待ちの列の中ほどにいた私に激突したことがあります。そういう私も、初級時代には行列の最後尾にぶつかった覚えが一度ではありません。またNHK教育番組で、デモンストレーターが板に乗り遅れて後に転ぶ映像が、アウトテイク集で放映されました。


10 カービングスキーなら、そうした暴走のトラブルは減るのか?

同じ暴走がカービングスキーで起きる確率は、完全にゼロと言い切れます。そこまで?と思うでしょうが、カービングスキーの特徴のひとつに、後傾姿勢でも回転してくれる性質があります。後に倒れかかっても、雪をひっかくブレーキ抵抗がスキー後部に発生し、すると体が前へのめって自動的に持ち直せる、何ともうれしい仕組みです。人を置き去りにしないスキー板は、ビギナーに限らずベテランにもありがたいものです。


11 そんなカービングスキーに慣れて、元の旧式スキーに戻ると、どうなるのか?

卒業したはずの直進と暴走が戻ってきて、驚くほどへたになります。1998年2月のある日、私はしばらく離れた旧式スキーを午前中に試して、午後にカービングスキーに戻して、差を調べる予定でした。ところが、旧式スキーが朝の硬い雪で止まれずハアハア、ゼエゼエなので、やめてカービングスキーに交換しました。すると同じガリガリ雪なのに魔法のように止まれます。差がありすぎて実験するまでもなく、この時が旧式スキーを使った最後です。


12 スキー技術が真に本物でないから、難しい旧式スキーがダメだったのでは?

理由の大半はそれだと思います。しかし短期間使っただけのカービングスキーが、長い年月使ってきた旧式スキーを、こうまで乗りづらくする現象は、私だけでなくどのレベルのスキーヤーにも起きています。旧式スキーに、かなり無理して乗っていたことになります。板のカービング化で平易になったあまり、スキーが別のスポーツに変化したようにさえ思えます。


13 長年使ってきた旧式スキーなのに、なぜ使いものにならないのか?

カービングスキーは、真剣に力まなくても曲がれるから、自分の中で動作の省力化が進んでいたのです。旧式スキーは、操作ポイントが実に多く、細かい神経もつかいました。滑り出す瞬間に気が散っただけで、その一本が失敗に終わるなど、気むずかしい道具だったのです。一方のカービングスキーは、操作ポイントが簡素で、細かい操作ぬきでもスイスイ曲がります。カービングスキーに体が順応してから旧式スキーへ戻ると、力も神経も行き届かないのです。


14 元の板に戻れなくて困らないか?

戻ろうにも、旧式スキーは生産終了しています。


15 旧式スキーの製造が、各国いっせいに終わったのはなぜか?

商品価値がないことが、各国でいっせいに知られたからです。私に言わせれば、旧式スキーは欠陥品です。全く使えないわけではないものの、目的と機能が著しく食い違っています。回って楽しむ道具なのに、回りにくく作られており、回る練習ができません。しんどさや危険性もそうだし、何といっても快楽が乏しく、レジャーの日々が暗くなります。2000年現在、売れ残りを店に置けば買う人はいるでしょうが、買う側だけでなく売る側も不幸です。


16 売る側の不幸とは何か?

客離れによるスキー市場の縮小です。難しい道具を使った客は、スキーで食べていく職業でもない限り、楽しさがわからずに撤退することが、結果論からわかっています。曲がらない暴走スキーを店が売り抜けるよりは、よく曲がる新型スキーを買ってもらった方が、客の満足度が高まってリピート率が上がり、関連商品も売れると考えられます。客がスキーと離縁しては元も子もありません。


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