スキー100年目の革命Q&A

07 カービングスキーはスキー場の異端児となった


1 カービングスキーに乗り替えてゲレンデに出た時、最初に何を感じたのか?

まず驚いたのが、カービングしないスキッディング(ずらしが混じる普通の滑り方)でさえ、板が勢いよく跳ねるように戻ってくる「元気さ」です。しばらくはポンポン足を投げ出して、荒く滑っていました。従来ならありえないほど遠くに足を放り出せるので、カービング仲間で「踊る靴」と呼びました。


2 カービングターンはできたのか?

カービングターンを試して戸惑ったのが、旧式スキーではありえない回転の深さです。雪にパチンとはめてレールターンに入れると、板が予想外に素早く、強く、深く回り込もうとするので、足元からひっくり返されそうで、思わず板の回転をおさえてしまいます。同じ対応不能を、雑誌テスターの公認デモンストレーターも書いていました。「回りが良すぎて体が対応できない・・・」。板が勝手に回って足を持っていく動きに、プロも戸惑ったのです。


3 ビギナーなら板に振り切られて、本当にひっくり返されないか?

それは実は逆で、ビギナーは動作が消極的で小さいので、板が大胆に反応してくれるカービングスキーは、ちょうど具合がよくなるようです。


4 97−98シーズンのゲレンデで、使用状況やシェアはどうだったのか?

1998年1月に、鳥取県の大山スキー場に持ち込みました。しかし客もスクール教官も使っておらず、自慢の新兵器どころか完全に浮いた状態で、同行した大学競技スキー部出身者も「そんな板は邪道ですよ」と言って軽蔑し、スキー場全体を見渡しても一人も使っていないと指摘しました。別の筋から「へたな人ほど道具に頼る」「南の県だけで流行っている」という冷やかしも、さんざん聞かされました。


5 滑って見せれば、軽蔑が尊敬に変わったのではないか?

逆でした。私は当初のナロースタンスを改めて、ワイドスタンスでカービングターンをやり直しました。しかし1990年代といえば、まだ全スキーヤーの念頭に、両足をぴったりつける指導の名残がみられた時代です、両足をガバッと40センチも開いた私の姿は、周囲の目にはダウンヒル競技の物まね芸か、ヤケクソなのか、あるいは根本的に滑り方を勘違いした奇人変人に見えたのです。


6 そこまで変な目で見られたなんて、今では考えにくいが?

98年に、旧式ずんどうスキーの2人の競技出身者に、カービングターンの足のローリング操作を示したところ、「それでスキーの動きのつもり?」「スキーが全くわかっていない」とあきれ返っていました。体を左右へスルスルと平行移動し、エッジを立てて待つシンプル動作は、今からわずか3年前のスキーの常識からもかけ離れていました。スキー操作は複雑で、説明がつかないものだったからです。別の人は板の形を見てこう言いました。「毒へびのコブラみたいで気持ち悪い、かまれたら死ぬ。しっ、しっ」。


7 しかし、旧式スキーが製造されない今、否定する方が肩身が狭くないか?

ひとつの確信は、広島のスキー場で2000年現在、スキースクールの教官の一部がカービングスキーに乗り替え始め、旧式スキーと半々になった点です。今やカービングスキーのみが製造されるので、たとえゆっくりでもシェア逆転は必至と予測できます。2年前の98年には、そこの教官の全員が旧式スキーだったので、着々とオフィシャルなシェアが増えている最中です。


8 ベテランスキーヤーの中にも、親カービングスキー派と敬遠派がいるが、その差は何か?

体験の有無です。未体験なら反対し、体験すれば賛成します。食べ物で言えば、納豆好きにとっての、しょうゆとマヨネーズを混ぜた納豆かも。食べれば皆こりゃおいしいと言い、食べないうちは最悪のまずさに決まっていると断言する。あるスキー場で面識のないスキーヤーと話し込んだ時のこと、彼は千円と消費税で買えた旧式スキー(メーカー希望8万円前後)を示し、今後も十分満足だと反論します。しかし直後に25度の荒れた斜面をゆっくり小回りする私を見て、彼はダダダーッと荒々しく追いつき、余裕の秘訣をたずねてきました。


9 どう答えたのか?

「さっき説明した板の設計の差が、雪を軽々と押さえ込める性能の差なのです。腕のせいではなく、これはこういう製品です。急斜面でも、あわてず騒がずゆっくりと回れます」と。威力をその目で確かめれば、仮にスキーの神様でさえ、旧式のずんどうスキーを続ける根拠を失うはずです。


10 旧式とはいえ、たった千円で高級スキーが買えれば、大もうけではないか?

しばらくすれば大損に気づきます。1997−98シーズンに主流に転じたカービングスキーは、99−00シーズンになれば売り場を完全に支配し、在庫の旧式スキーは片隅で投げ売りされました。10万円の板が2980円とか。しかし千円で買って得したと思っても、その後カービングスキーに乗った日に後悔することが約束されています。


11 カービングスキーは、当初あだ花となって消えると言われたのか?

その意見を広く聞きたくて、98−99シーズンにひたすらインタビューし回りました。結果は、「今後はこれだ」と言う人より、「そのうち消えて元の板に戻るだろう」と言う人の方が少し多くてほぼ半々、しかしその読みは外れつつあります。カービング批判をやりすぎて、バツが悪い人もいるでしょう。ただそれも時間の問題で、操作感が複雑でわかりにくい道具よりは、単純で成果が目立つ道具が支持され普及するはずです。


12 カービングスキーでスキーの常識が変わったことは、世にどの程度知られているのか?

スキー誌は肯定的な話題で持ちきりですが、初級者がスキー誌を読むことはまずないので、伝わっていません。ビジネス方面では、日本経済新聞に毎年特集が組まれ、オジサンスキーヤーの目には触れました。国民皆スキーヤーという時代の直後で、スキー体験者は膨大なので、今スキーに何が起きたのか、メーカー連がテレビ広告するぐらいの商売気はあっていいでしょう。