スキー100年目の革命Q&A

24 スキーの魅力の正体は何か


1 スキーは、「誰もが楽しめるスポーツ」と言われてきたが?

そのワンフレーズだけだと、誤解をまねきそうです。スキー滑走は楽器の演奏に似ており、れっきとした特殊技能です。正確に言い直すなら、「誰でもできるようになれ、できれば誰もが楽しい」という二段階です。楽器のように一握りの才人に限らず、スポーツが得意でない人でもおもしろい体験ができ、他人の目も楽しませるというものです。境目にあるパラレルの壁も、才能や素質ではなく、日数で越えます。


2 「それぞれのレベルに応じた楽しさがある」とも言われるが?

レベルが高くなるほど、楽しくなります。雪の上でどれだけ自在に動き回れるか、その自由度が増えるほど楽しさが拡大します。例えば斜面に右向きに立つ状態で、その場で素早く左向きに変えられるかなど、ちょっとした行動の自由度が増えただけでも、スキーの楽しさは拡大していきます。


3 スキーの魅力は、やはりスピードなのか?

スピードは最初に出会う魅力ですが、実は脇役です。単にスピードが目当てなら、まっすぐ進めばいいのに、直滑降ばかりやる人はめったに見ません。スキーを全くしない人は「山を滑るだけで何がおもしろいのか」と疑問を持ちますが、全くその通りで、下に滑るだけではおもしろくありません。右へ左へと曲がって滑る、つまりスキーの魅力の主役はターンです。


4 ターンのどこが、そんなにいいのか?

ターンの不思議な快感を分析するなら、長いスキー板が遠心力でたわみ、弾力が体に及ぼす浮遊感があげられます。ギュイーンとなめらかに谷回りする加速時に鮮明です。谷回りの時間が長くなるカービングスキーでは、これが旧式スキーより大幅に強調されます。大きく、小さく、ゆっくり、素早くと、あっちこっちへ曲がりながら降りて行く、それをいかに自由自在にできるかがスキーの味わいになります。日常の中に、これと似た味はありません。


5 谷回りということはパラレルターンであり、ならばボーゲンスキーヤーに快感はないのか?

ほとんどありません。ボーゲンスキーヤーが、パラレルができた日に特別な浮遊感に目覚め、別世界の扉を開いた心境でスキーに惚れ込むのは、差があまりに大きいからです。プルークボーゲンは、板をスリップさせたブレーキ操作なので、キューンと走り抜ける爽快感がありません。板を押してビヨーンとたわませた浮遊感もなく、遠心力もあまり感じません。補助輪つきの自転車では、S字カーブをスイスイ走り抜ける爽快感がないようなものです。


6 それが、パラレルスキーヤーとボーゲンスキーヤーの意欲の差なのか?

もちろんターン以外にも差はあります。パラレルスキーヤーは「雪の上で自由」、ボーゲンスキーヤーは「不自由」です。どこへ移動する時も、自由と不自由の差は見かけ以上です。例えば、ゲレンデの一番端に来て180度向きを変える時、パラレルスキーヤーは一瞬でくるりと回し込みます。この小粋な瞬間芸が、パラレルスキーヤーへのあこがれを増幅します。


7 ボーゲンスキーヤーがスキー場行きをためらう理由は、そのあたりか?

やはり雪上の不安があります。パラレルでスイスイ滑れる人に比べると、足元に常に不安定感がつきまとい、それが転びそうな危うい予感、びくびくし続ける恐怖感になり、慢性的な不快感として垂れ込めています。誘われると、「行きたいなー」と「ヤダナー」がぶつかり、心がはずまないのです。


8 上達するにつれて、より強く行きたくなるのはなぜか?

悪条件下でも、爽快感が得られるからです。例えば中国地方ではゲレンデのコンディション、つまり雪の量と質が文句なしに優良なのは、土日にして一冬に6日、しかも1日のうち2時間限りというように少ないものです。しかしスキーヤーが上達するにつれ、雪の量と質が悪くて初級者が手こずるひどいコンディションでも難なく滑れて、吹雪でも雨でも、いつ行っても安定して楽しめる保証がつくのです。


9 スキー中毒は、いつ頃起きるのか?

80日を超える頃になれば、雪の上でかなり自在に動けるようになり、めったなことでは転ばなくなります。恐怖もかなり薄れ、スリルと安心のバランスが取れます。しかしできないワザもまだまだ多いレベル。この時期になると、暇をつくり出してでも行こうという気になります。


10 やがてスキーに飽きて、生涯スポーツから外れる人もいたが?

スキーに飽きたと言う人は、実は上級者ではなく初級者です。たいていはボーゲンから先へ進む段階で、我流に行き詰まったマンネリ状態です。飽きたというのは言い方であって、目標が見えない低迷が続いて、関心がゆっくりと落ちた状態です。


11 飽きたと言う人に必要なのは何か?

飽きたケースは技量上昇曲線が人一倍ゆるく、滑走日数が少なすぎて成果がなく、万年浪人の状態です。習って再出発して密度を上げ、正道に乗せてパラレルの壁を越えるしか解決はありません。どうやって密度を上げるのか、ここでもカービングスキーで収穫が激増するはずです。すでに少し滑れる人がカービングスキーに替えると、1時間以内にもう成果が出るでしょう。


12 パラレルの壁を越えると、上達が加速度的に伸びるのはなぜか?

行く日数が増える以外にも、1日に滑る距離とターンの回数が一気に増えるからです。また雪質変化、斜度パターンなど、体験内容も拡大し、知らないうちに訓練が広範になっています。ゲレンデで同じ時間を過ごしても、行動の量も質も増えます。上達すればするほど、立ち止まって考え込んだり転倒しているロスタイムが減るので、上達が上達を加速します。


13 その反対の理由で、ビギナーは上達が遅いのか?

初級者はそうですが、実は全くのビギナーだけは別で、進歩は急激です。確かにビギナーの初日は、リフト回数が終日1、2回に終わり、ターン数もわずかに終わります。このスキー場はゆるいからと、ビギナーに1日券を買わせても、必ず元が取れず無駄になります。ところが3日もすれば、1日券で得する程度に滑れます。滑走距離の短さを考えれば、実はビギナーは少ない練習量で、驚くほどメキメキ腕が上がっているともいえます。


14 カービングスキーが簡単なら、パラレルの壁越えの感激は小さくならないか?

たぶん昔より小さくなります。さっぱり曲がらない旧式スキーに比べ、早い段階から曲がれて、ボテボテ転倒しにくいカービングスキーでは、達成感が早くから得られ壁がかなり低くなります。そして小回りの壁や、不整地の壁、新雪の壁なども早め早めに現れます。日が浅い割にさりげなくうまい人が増えるなど、カービングスキーによるハイレベル化とハイテンポ化が確実に起きるでしょう。