スキー100年目の革命Q&A

31 カービングスキーのブームはまだ前夜


1 すると、今カービングスキーで滑っている客は、いったい何者なのか?

ほとんどは、旧式スキー時代にパラレルに届いていたスキーヤーです。先述のようにおおむね95年頃に、残る側へと振り分けられた人たちです。新参ボーダーは「スキーは皆うまいもんなあ」と言いますが、ボーゲンスキーヤーのほとんどが断念して去った後なので、技量に片寄りが起きています。スキーに残れた人たちは、少数精鋭的にカービングスキーの平易さと高性能を享受し、「あの混雑の頃」とは別人のように腕を上げているのですが・・・


2 スキーを始めた最初からカービングスキーに当たった新顔も、ある程度はいないか?

旧式スキーを知らずに、新しいカービングスキーから入ったニューフェイスもいます。ゲレンデで見ると、旧式スキー初級者のレベルを軽く追い抜いていますが、かといって本人は簡単だとは感じていないようです。比較するものがないから、当然なわけで。


3 旧式スキーを知らないニューフェイスは、内訳はどういう人なのか?

多いのは、バブルのブームで機会がなかった中高年や、当時の修学旅行で行った生徒が、後で思い立ったなどです。修学旅行で目覚めた校長先生の退職者もいましたし、遅ればせながらスキーをやってみようという青年もいます。流行とは逆に、あえてスキーを選んだ、という人にも会いました。もちろん人数は少ないものです。普通に友人の輪で集団参加する場合は、ほぼ自動的にスノーボードになると思います。


4 一足違いで去った人たちは、カービングスキーの評判を聞いて戻りそうか?

むしろ最もスキーから遠いのが、一度はスキーにほれ込んで日数を重ね、やめて道具も処分したそのグループでしょう。レンタルで少しかじった人とは違い、自らの限界を見届けて断念しただけに、アンチスキーの意志が強固で、根拠も具体的なのです。自分の限界が旧式スキーの限界による被害だったとは、縁を切った後では体感も実証も不可能なので、スキーに戻る可能性は限りなくゼロに近いでしょう。


5 だとしても、カービングスキーの威力を耳に入れて、再び食指が動かないか?

この本もそれが目的です。まず私は1999年に手製パンフレット「カービングスキーなるもので新時代が来た、上達のチャンス到来、あなたはラッキー」という特集号をつくり、パラレルの壁で停滞中の周囲の人に配りました。しかし反応は悪く、かつて私が企画したツアーに喜んで参加し、ゲレンデ写真に幸せな笑顔で写っている人でさえ、スキーの話はもういいですと、ページを開かず返すありさまで、スキーに対して心が冷え切っていました。その時この本を思いつきました。


6 救世主となるカービングスキーを信じれば解決するのに、なぜ嫌うのか?

根底には、スキーの世界に対するばくぜんとした不信感があります。漫画誌や情報誌などとタイアップしたムード演出を受けて、胸ときめかせてゲレンデに向かった10年前の1990年頃の新参者たち。しかしスキーの難しさと恐さにノックアウトされて、もうこりごりで、板が革命を起こした話に耳を貸す心境ではありません。


7 だまされたと思って、カービングスキーを試せばいいのに?

すでに一度だまされたと思っていて、警戒しています。おしゃれなイメージに希望をふくらませてゲレンデに立つと、ユーミンのさわやかな曲とは大違いの重労働にショックを受け、数年は耐えた人も、パラレルの壁に打ちのめされて去りました。時代の勢いに乗せられ、イメージ戦略に引っかかった、マスコミにだまされた、ワナにはめられた、という被害感情もあるでしょう。


8 スキー天国などというイメージは、歌の世界のウソなのか?

実は中級者以上にとっては、歌のとおりの天国です。旧式スキーでさえ、そうだったのです。しかし歌詞に出ないキーワード「パラレル」がやっぱり分岐点になるので、「スキー20日でやめました」という人には天国は出てこないイメージです。むしろ地獄の方が近かったのでしょう。


9 もう一度映画などで、ブームを起こしてみてはどうか?

あの頃の記憶が残るうちは無理です。平成バブルのスキーブームは、夢の高級スポーツの代名詞だった「スキー」という語が持つイメージを、否定的なものに変えてしまう大きな逆効果があったと思います。あこがれのスポーツ、やってみたいスポーツ、関心を持つスポーツから、スキーが外れたのです。


10 そのマイナスイメージの浸透が、かつてないほど大規模だったわけか?

劇的なほど参加者が多く、層も幅広かっただけに、「全然おもしろくない」という否定イメージが国内に行き渡ってしまいました。あれ以来の経過時間が足りません。2000年の今、私が「正月はスキーに行くので・・・」と言えば、わずかな未体験者は「いいなあ」と言い、多くの体験者は皆黙っています。「あんなきついもの、よく続くなあ」「タデ食う虫も好きずき」と感じているのです。タデのように苦くて食えないスキー板は、もう作られていないのに。


11 いつかまたブームが起き、そして断念しブーム終了と、歴史は繰り返しそうか?

今オギャアと生まれた子たちが起こすと予想される次回のスキーブームは、暴走しない板で迎える特異なブームとなります。こんなことは、人類史上初めて。早い上達と恐くない斜面のせいで、ゆっくり続くブームかも知れません。前回の平成ブーム終了後をカービングスキーでサバイバルした人は、その時には驚くべき腕前で雲の上にいるでしょう。


12 21世紀に起きるアジアのスキーブームは、どんな展開になりそうか?

今後アジア各国で起きるスキーブームの道具は、カービングスキーです。日本の20世紀最後のブームよりも、上達は短時間でしょう。ただし旧式スキーで浪費した時間を、カービングスキーで取り返す人はいません。悪い時代を知らない国民は、特に感慨なく上達するでしょう。日本のブームはその遅れを取るはずです。メーカーはそれまでに、もっと簡単に滑れるスキー板を考案しているでしょうが。


13 旧式の過去を持たない、カービングスキー入門者は、簡単だとは感じないのか?

カービングスキーを見て「何じゃこりゃ」「変に幅広いぞ」「しゃもじみたい」と思った人は、旧式スキーで苦労しただけに、試すと非常に簡単に感じました。一方、今からの新参者は、「なるほどこれがスキーか」と普通に受け止め、昔の人よりずっと上手ながらも、相応の難しさは感じるはずです。旧式と比べない限り、上達の早さも感じません。ただ、「自分には不可能だから、今後一生やりません」という、悲壮な行き詰まりは大きく減るでしょう。


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