スキー100年目の革命Q&A

32 スキー教習、いったい何を習うのか


1 カービングスキーが簡単だとすれば、習う必要はないのか?

やっぱり最初に習わないと、将来がないようです。スキーが思うようにできず撤退する人の資質面として、過大な自尊心などが浮かびますが、統計ではむしろ基本を一度も習っていない点が共通します。私の周囲でも、我流で残れた人は一人もおらず、習った人のみ続いています。今後カービングスキー製品がもっと簡単になっても、滑る以前の基本動作の底上げは限られ、早い段階から横へそれる失敗の可能性は昔と変わらないでしょう。


2 最初に習うのはわかるが、1週間ほど滑った後でまた習う意味はあるのか?

パラレルの壁の存在を知る意味は決定的です。一度も習わない人は、何をやればいいか、どこへ向かうべきかが発見できず、ゲレンデに行く意味をだんだん見失っていきます。友達がやめたから自分もやめた・・・も目的喪失の連鎖です。何度か習えばパラレルの知識を得て、自分がどの段階にいて、行く先がどこかがわかります。車の運転練習で「今日、第二段階が終わった」というように、自分の位置を知ることが重要です。


3 教習では滑っていない時間が長く、貴重な時間がもったいない気もするが?

スクールの2時間は、実は練習時間ではありません。2時間で何も完成させません。2時間は練習バリエーションの紹介カタログであって、生徒は様々な練習法を授かり、後で試します。解散後が本当の練習時間です。だからいつも習ってばかりでは確かに貴重な時間が無駄です。俗に言う「習うより慣れろ」は、正確に言うと「習ってから慣れろ」です。


4 技術面の習得という効果はどうか?

初めての日に上手に教えるスクールに参加し、大まかな基本を知っておくと、以後の5年10年で大差がつくのは、カービングスキーも同じです。途中から細かい技術も必要になりますが、技術伝授以上に修整作業が中心になるのが実際です。スキーは、案外個性が入る余地が多いのに、案外我流が通用しにくいスポーツだといえるでしょう。


5 全く習わないで続けた場合、年月がたつとどうなるのか?

超がつく後傾、無理やり閉脚、谷折れ曲がり、ストック突きが反対、ピョコピョコおじぎ動作など、おかしいなりに同じワンパターンで固まりやすくなります。この姿は、ビギナーがスキーに抱きやすい先入観や思い込みの合計といえます。習うといっても、こうした先入観を取り除いて解放する目的もあるのです。


6 一番最初の日に習わないと、何が起きるのか?

例えば、誰にも起きることが大げさに思えます。ある知人は初めての日、倒れて起き上がる時に、板同士を踏んで立ち上がれない事態に大ショックを受け、すっかり腹が立ちました。元々スポーツが得意で自信があっただけに、このろうばいに面食らって許せなくなり、その場でスキーは二度とやるまいと誓って、今も誓いを守っているそうです。「習えば良かったのでしょうが」と後で聞きました。


7 見よう見まねで、何とかならないのか?

他人を見ても、解読できないから無理です。水泳に似ているかも知れません。クロールや平泳ぎの体の動きは、普段の生活に全く存在しません。だから、見まねでテキトーに泳いでも何かが間違っていて、しんどいだけでプールが楽しくない人は多いのです。趣味の水泳が楽しくて長続きする人は、一度コーチを受けて、水のつかみ方を知った人たちです。スキーも雪のつかみ方を知ると、おもしろくなるのです。


8 一流のスポーツ選手には、自己流の人が多いとも言われるが?

私はその説が信念ですが、単なる言い方だともいえます。基本練習する時期と、独自の工夫で拡張する時期の、2つの時間配分が片寄ってもかまわない程度の意味だと思います。こうした厳密でない表現には注意が必要で、自己流の有名選手とて子どもの時にはちゃんと立派な教師についていたりしますから。


9 スキーで我流は通用せず、習う効果がそれほど大きいのはなぜか?

スキーの動作が日常生活にないからです。両足を肩幅にして立ち、少しかがんで、両ひざを同時に左右へスライドする。この動きはスキー以外にありません。皆が白紙なので、そこに良い情報と視覚イメージを焼き付ければ、必ずそこに向かいます。と同時に、白紙は汚れやすいのです。特に大人は、あれこれ空想した先入観に引っ張られ、悪いクセが簡単につきます。きれいに滑る人は、必ず指導を受けて補正しているものです。


10 バスツアーなどと違い、自分たちの車で行くと、習えない場合もあるが?

現地の有料スクールが手堅いでしょう。完全ビギナーは、友人スキーヤーのじゃまになるまいと、「この辺りでテキトーに滑っています」などと、最初から自習を選びがちですが、この時点で「一度試して終わり」の宿命が濃厚です。全スキー場にスクールがあるので、午前中に手ほどきを受ければ、午後がとても有意義です。いきなり好きにやっても無駄なスポーツなので、最初の2時間は必ず習うようにします。


11 習うなら、団体スクールと個人教師のどちらがいいのか?

団体スクールがベターです。他の生徒の行動を見ると、自分の行動の限界が広がります。「あんな難しそうなこと、できるかなあ・・・」と思って見ると、順番に滑る皆さんできている、自分もエイヤッとやるとできた、となります。


12 団体スクールだと、1人当たりの滑る時間が減ってしまう心配があるが?

個人教師なら確かに滑る時間が増えますが、生徒同士が互いを見て勇気づけられたり、参考にする場面がないので、生徒は心身が縮み、難しそうならできないと決め込むなどで、成果がかなり落ちます。個人教師は上級者のテクニック洗練向きです。生徒が3、4人だと、両方のいい面が得られます。


13 初めてスキーをつけたビギナーの場合にも、個人教師は向かないのか?

やはり不利です。1対1の教習では、大人でもこういうことが起きます。「私が滑るのをよく見ていてください。合図したら同じように滑り降りてください」と言い残して、滑って見せて振り返ると、その生徒がなぜか転んでいるのです。当然、私の試技を見ていませんでした。


14 立っているのが難しい地形だったのか?

私が滑り始めた直後に、追いかけて転倒しているのです。段取りをもう一度説明しましたが、また追いかけて来てしまい、教習が成り立ちませんでした。


15 なぜ、その場にとどまって見ていられないのか?

斜面に1人取り残されて不安になって、試技を見届ける心の余裕が失われ、「待ってくれー」と思わず追いかけてしまうのです。この点で、団体スクールなら先生が下の方に行ってしまっても、残った生徒が追いかけるなどは起きません。先生がはるか向こうに離れ、次の指示がわからない時は、みんなで知恵を出して判断するなど、団体教習は思った以上にスムーズに運びます。


16 初めてのゲレンデで、リフトに直行する強者がいるらしいが?

楽しい冒険の思い出をつくれる可能性はゼロです。佐賀県のスキー場で、リフト降り場から少し降りた雪上に、長い時間倒れて立てずに放置されていた人を救出に行きました。聞くと、ビギナー同士の友達といっしょに来て、何もわからずすぐにリフトに乗ったとのこと。手をさしのべた時すでに遅く、「もう二度とスキーはしないわ」と不機嫌に訴え、板を外して手に持ち、テクテク歩いて下まで降りたではありませんか。


17 教則本は、教師の代わりになるのか?

書斎のスキー勉強にはあまり期待できません。そもそも、スポーツの技術解説を読んで理解できるのは、自分がそれに近い技術を持っている場合です。持たない技術は、文章説明を頭に入れるのも困難で、イラストを見て体を動かすのは不可能です。この本が技術の詳細よりも、原理の詳細を中心としているのはそのためです。


18 指導者の当たり外れの悲喜劇も、よく聞く話だが?

超ベテランに注意、という面があります。子ども時代に習熟した人は、「核心に詳しくない」場合があります。幼少に始めたスキーはネイティブ、つまり母国語的体得になっていて、大人がつまずくカ所が記憶にないからです。雪国育ちの超ベテランに教わると案外わかりにくいことがあり、腕がずっと下でも成人して始めた都会人の説明の方がわかりやすいことがあります。


19 英才型と晩成型とで、教え方がどう違うのか?

例えば生徒が姿勢でこんがらがった時に、「何も考えずに普通に滑れ」などと一喝するのは、いかにも雪国育ちのエリートです。始めたばかりの大人には、「普通の滑り方」など存在しないので、途方に暮れます。これが遅く習得した教官なら、初級スキーヤーが何にとまどい、何ができて何ができないかを、我がことのように記憶に残しているので、解きほぐせる可能性も高いのです。


20 教えたように生徒が滑れなくて、イライラして怒っている教師も見たが?

「教えたように、なぜできないのか?」と首をかしげる人は、指導者に向きません。「なぜか」を見破り、解決に見当がつく人が向きます。概して多い間違いは、生徒が滑れる斜度、雪質なのか、左右に十分余裕があるかを甘くみて、やりにくい場所で根性主義をやってしまうスパルタです。ついに曲がれず2時間を終えた悲劇などは、ほとんどが悪雪やまずい場所のせいです。指導者は、生徒のスキー板は曲がりやすい製品なのかを、一番最初に調べておく必要があります。当面はスキー客の激減で、教え方のうまい人が残っている傾向はあります。


21 やる気がなさそうな、トンデモ教師に教えられた人もいるが?

バス旅行の特典の初日無料講習が散々だった話を、講習参加者から聞きました。指導者が勝手に自分の練習らしきを始め、時間中にたびたび放っておかれたのです。出発県から派遣された素人インストラクターだったので、指導員資格の更新に必要な教習実績ノルマが、日数消化で済まされた問題と思われます。この点では、有料スクールなら要望や苦情も言えるし、特に年配教師に説明がうまい人が多く、好評の体験も耳にします。