スキー100年目の革命Q&A

38 高級スキー板は、本当に高級なのか


1 板のグレードの意味が、色々な説明を読んでも、よくわからないのだが?

高価でハイグレードなスキー板の、最大の特徴は硬さです。上級者の都合に合わせて、硬質に作ってあります。


2 ハイグレードのスキー板には、いかにも豪華そうな雰囲気があるが?

ハイグレードは必ず上級者用で、初級者用は存在しません。作りの違いをみると、@構造、A心材、Bソール材、C絵柄、などが「高級」にしてあります。かなめは@構造、A心材で、補強材で硬くした製品がほとんどです。しっかりと乗り込んでやれば性能を発揮できる、などのコメントがつく製品がそうです。


3 とりあえずは、高性能と考えていいのか?

そういう意味は全くありません。電器製品のように、上質、精密、多機能をイメージすると間違いです。スキー板のハイグレードは、重い体重、強い筋力、速いスピードを受け止める硬さがあるだけの話で、大柄で体力のある選手や技術レベルが高い人の、強く激しい動きに合わせているのです。強化バージョンゆえ、ラインナップの上位にあって値段が高いだけで、優れモノの意味とは違います。


4 ハイパフォーマンスが可能と書かれていて、いかにも性能が高そうだが?

エキスパートのハイパフォーマンス、平たく言えば力強い行動を、頭打ちにしない意味です。ほとんどはスピードの話で、高速で飛ばして滑っても平気な強度があります。勘違いしやすいのですが、板が人間の実力にゲタをはかせて、能力アップさせる効果はありません。全てのスキー板は、ターゲットユーザーの運動能力を少し超える硬さを持たせてあります。初級用の板でも子ども用よりは硬いし、その子ども用も幼児用よりは硬くしてあります。


5 硬くないと板が壊れてしまうから、硬くするのか?

板が軟らかすぎるとヘナヘナと腰折れになって、意のままに動いてくれないから硬くします。目的が自動車のサスペンションと似ているでしょう。高速安定のために硬くし、重い荷物を積む車も硬くします。硬ければ硬いほどいいわけもなく、自分にとって具合のいい硬さの範囲があるのです。


6 硬い、軟らかいとは、具体的にどの部分のことなのか?

板全体の変形しやすさです。硬さを示す語として、フレックスとトーションの二つがあります。釣り竿がしなるような力への反発がフレックス、雑巾をしぼるような力への反発がトーションです。曲げ強度と、ねじれ強度です。フレックスが硬いと、たいていはトーションも強くなります。


7 店で板の硬さを調べるには、どうすればいいのか?

板を押してたわませます。ただし、板を手で持ちテール部を床に当て、手でぐいぐい押し曲げては全くわかりません。その時の心境しだいで、元気に押したり控えめに押したり、人間が計測器の役を果たさないからです。ではどう押すのか。立てかけた状態で指1本で何度か押します。当然ほとんどたわみませんが、硬めの板を軟らかめだと錯覚する間違いは減ります。


8 バランスの取れた板、という評価も見かけるが?

フレックスとトーションがほど良くて、多目的に使える意味です。例えば、ソフトフレックスかつハードトーション、という片寄った板だと、カービングターンには好都合です。ところが、トーションが強いほどずらしにくくなる副作用があり、過剰に切れが良すぎて雪にもぐり込んでしまう弊害さえあります。そんな板は柔らかい雪は苦手です。何かを極端に作ると、苦手分野が目立って、万能性がなくなります。


9 上級者は、硬い上級用を滑りやすいと感じているのか?

自分に合わないで買っていた場合もあったでしょう。当の上級者は、滑りやすさを求めて硬い板を選んだわけではありません。旧式スキー時代の上級者の消費行動は、プリントデザインがチープな初級用を買うことはまずなく、決まりごとのように上級用を買いました。すると、自動的に硬い板に当たったわけです。高価イコール硬いとは知らずに大枚をはたいた人もいたでしょう。


10 そんな硬い板を初級者が使えば、どうなるのか?

初級者にとって「単に硬いだけ」でメリットは何もなく、逆にデメリットだらけです。子どもが大人用の自転車に乗った時に似て、背伸び感とともに大きい枠にはめ込まれたような不自由感や無力感が起きます。自分でビヨンビヨンとたわませることができない硬さだと、板が言うことを聞かず、思い通りに動けないので、スキーの楽しさがなくなり、難しさが誇張されます。


11 硬すぎる板だと、具体的に何が起きるのか?

たわみが小さいので弧がふくらみ、直線的に走る傾向があります。踏んで押しても板が反応しなかったり、曲がろうと思った時に曲がれず、リズムが遅れがちです。また体を前にやろうとしても押し返され、なんとなく後傾や棒立ちを強いられます。飛ぼうとして飛べず、踊ろうにも踊れず、人がスキー板を支配できず、逆に支配されます。


12 そんな硬いスキー板に筋力を費やす人は、何か利点があるのか?

硬い板はスピードが出ます。ガチガチの雪質や荒れぎみの斜面を高速で降りても板がグニャグニャ暴れにくいので、レース用の板は適度に硬めです。油断すれば直線的に走るような硬質の板は、注意深く押さえ込んで滑ると良いタイムが出ます。この点、軟らかい板はミスに寛容ですが、細かいバタつきで小刻みに失速してタイムは遅くなります。


13 買い直しがもったいなくて、最初から上級用の板を買う初級者もいるが?

損得を金額で決めると損します。かつて大安売りの大回転競技スキー板を買ったボーゲンスキーヤーが目につきましたが、見るからに全身が硬直していました。あれでは時間や交通費も無駄です。例えば小回りが苦手なパラレルスキーヤーは、板を上級用から初級用に替えると、「あれっ、できた」となるでしょう。最初に初級用で動き方を理解し、次に上級用で応用する方が、初級用の出費だけが増えて、後々が明るいから得なのです。ビギナーが金額的に一番楽する理屈は、上級用をタダでもらうことですが、運動に支障が起きて得るものはありません。


14 カービングスキーに変わっても、高価イコール硬い板なのか?

大部分はその基準で作り分けています。一番高価なトップモデルと、その下のセカンドモデルがあって、シェイプと3サイズが全く同じで、絵柄の色以外に何が違うのだろうかという場合、トップモデルは金属板を1枚貼り足すなどで硬くしてあります。金属板の有無だけで、上級用と中級用を作り分けることが可能です。


15 高価であっても、軟らかいカービングスキーがあるそうだが?

全般にカービングスキーは、旧式スキーと比べると軟かく作られています。高価な割に驚くほど軟らかい板のシリーズがあるのも、カービングスキーの特徴です。ただし同じシリーズ内の上、中、初級グレードの作り分けでは、やっぱり高価イコール硬めにしてあります。


16 カービングスキーが、旧式スキーより軟らかめに作られるのはなぜか?

両足荷重で滑るからです。体重が左右の足に分散するので、半分程度の荷重でも十分たわむ軟らかさが必要なのです。その原理を受けて、製品は年々軟らかくなっています。一気にではなく、年々少しずつ軟らかくされる理由は、スキー板の革命の最中だからで、従来の片足荷重をカービングスキーでも続ける客が多いという条件で、まだまだ硬い新製品も多く、メーカーは軟らかい限界を手探りする状態です。


17 深く回って、そのまま山を上っていく板は何なのか?

カービングスキーだけにできるマジックです。旧式スキーの経験者は、山回りを続けても板が絶対に山を上らないことをご存じでしょう。いくら精密にターンしても、フォールラインに70度ぐらいからずれ始め、90度真横に向く頃にはズレズレの横滑りで斜面をずり落ちます。ところがカービングスキーは、90度を超えて回り込んで100度になっても、ずれないまま山をさかのぼります。地形を選べば、180度Uターンや360度一周するOターンも可能です。


←トップへ     ←前へ  次へ→