スキー100年目の革命Q&A

41 カービングスキーの長さに誤解が集まるわけ


1 カービングスキーは、今後もどんどん短くなっていくのか?

スカートの長さのように流行ができるでしょう。長さでスキーの楽しさがどう変わるか、ひとつ選ぶなら何センチが正解かなど、ユーザーもメーカーも模索中です。しかし、できるだけ短めをすすめる私でも、安定性から最短でも150センチはあって欲しいと感じます。私の印象では150〜170のどれでも失敗しませんが、140や180では利点と欠点が目につきます。長い板が尊敬される時代は終わったので、自分が安定を感じる範囲で短めをすすめます。


2 スキーのサイズ表示法が、昔と違うそうだが?

旧式スキーのサイズは、195センチなど1つの数字でしたが、カービングスキーは5つの数字で表示します。160センチ−107−64−96−14メートルというように、長さ−トップ幅−センター幅−テール幅−サイドカット半径です。おもしろいのはモデルのネーミングで、9.14だとか11.5などと、R14メートルやトップ幅11.5センチの数字に由来する製品名がけっこうあります。


3 150センチのずんどうと、180センチのカービングでは、どちらが楽か?

たとえ30センチ長くても、カービングスキーが格段に楽に回れます。長さではなく半径Rが決定的なのです。注意がいるのは、ずんどうスキーを短く作ると大変に不安定で、実用性がない点です。私はスキーを始めて13日目に、レンタルで旧式スキーの180センチのところを、一度165センチをリクエストしたことがあります。当時の常識では、165センチは中学生や初心者の女性が使う異例の短さでした。周囲は、「何それ、何でそんなに短いの」と目を丸くしました。


4 165センチという、旧式のずんどうとしては短い板で、うまく滑れたのか?

話にならないほど難しくなりました。165センチのずんどう板は、雪をつかまず非常に不安定で、クルクル過剰に回るのです。「回る」といえば、ターンに成功したように聞こえますが、要するに落ち着きなくスピンしているだけです。足場がフラフラしてヒヤヒヤで、何度も転倒しました。180センチをレンタルした仲間とは対照的に、足元のぶれを何とか押さえ込もうと、体を硬直させたおっかな姿でビデオに映っていました。


5 その時、何センチにしていれば良かったのか?

この失敗以降、私はパラレルができない頃でさえ、185センチ以上をレンタルしました。時には短い板を間違って渡されたので、申込書に身長を書かずに板190センチなどと明記しました。私は初級の時にすでに、スキーのうまいへたが板で決められてしまう現象に遭遇したのです。しかし、板が進退まで左右する残酷物語の全貌を理解するには、ずっと後のカービングスキーを知る日を待たなければいけませんでした。


6 190センチだとさすがに曲がりにくそうだが、それでも安定が重要なのか?

旧式スキーは、長めこそがパラレルの必需品でした。パラレル前後の中背の仲間が一人、思い切って195センチを新調し「長いから全くぶれない」と喜んでいました。レンタル時代より20センチも伸ばした彼は、私の目にも動きが安定し、躍進して見えました。結論は、パラレルを簡単にするには、挙動が暴れずに安定する板が必需品だということです。ではメーカーはどういう方法で安定させるか、それが昔と今で違います。


7 旧式スキーが中上級用で180〜205センチもあったのは、それと関係あるのか?

その長さこそが、板の安定を目的にしています。ずんどうスキーは雪への食いつきが甘くて、常にフラつきました。そこで長さを伸ばすことで、スイングウェイト(回転モーメント、あるいはイナーシャ)を増大させたのです。荒れた雪で板があらぬ向きへはじかれるのを、慣性質量を大きくして防いだわけです。


8 板が安定する仕組みが、旧式スキーとカービングスキーでは違うのか?

ぶれやスピンをどうやって防止するか、原理が全く違います。旧式スキーでは、全長を長く伸ばしてスイングウェイトを増やしました。カービングスキーでは、サイドカット半径を小さくしてグリップ力を増やします。ずんどうは「ずっしり」、カービングは「カッチリ」、方法は違えど板の安定は命です。


9 カービングスキーと長さの関係に、誤解が多いらしいが?

リフト客に、カービングスキーとはどういうものか、たずねて回りました。多い回答は、@短いスキー、A太いスキー、B先がとがらず丸いスキー。正解は「サイドカット半径が小さいスキー」ですが、長さに目がいく人が多い点に注目できます。


10 単純に、短ければ短いほど簡単だ、と思っている人が多いようだが?

色々と試せば別の答が出ます。旧式スキーが難しい原因は、長いからではなく、ずんどうで雪への食いつきが悪いからです。逆に、カービングスキーが簡単なのは、短いからではなく、Rが小さくて食いつきが良いからです。カービングスキーを指して「短いから簡単」と言ってしまう説は、新たな迷信です。


11 Rの大小の原理が無視されて、短さ信仰が生まれやすい理由は何か?

話が簡単だからかも知れません。「サイドカット半径が小さい」と言われても、数学的な話が入ってややこしく聞こえます。「直径はその2倍だから・・・」などと気を取られ、聞きそびれたりして。私も人に説明する時は、実物のスキー板を見せるか、さし絵を用意し、声に抑揚もつけます。一方「短いから」だと、話は簡単です。このように手短な俗説が信じられやすい例は、「金縛り」「降水確率」「劣性遺伝」「芸能人離婚理由」など色々あります。


12 カービングスキーの定義の俗説は、どういう内容か?

こういう説明を読みました。「スキーを簡単にしようと考えたメーカーは、スキー板を短く作った。すると短い分、太く見えるし、くびれも目立って見える」。一見科学的に読めますが、実は因果関係が逆、つまり原因と結果がひっくり返っています。起きた順序があべこべで、実際の製品寸法がどう変わっていったかも調べていない間違った説明です。


13 正しく説明すれば、どうなるのか?

「スキーを簡単にしようと考えたメーカーは、スキー板のサイドカット半径を小さくしようと、トップ幅とテール幅を広げ、くびれを目立たせた。その結果、短くても安定することを発見し、当初長かった板を段々と短めに作り替えていった・・・」。ね、説明の字数が多くなって、話が頭に入りにくく、意味をつかみにくくなるでしょう。


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