スキー100年目の革命Q&A

45 スキーボードからスキーに戻れるか?


1 20日スキーヤーが100センチ転向後、スキーに戻れば何が起きるのか?

スキーをやめたくだんの20日スキーヤーが、100センチ(スキーボード)に転向したシーズン途中に、ちょっと戻って他人に借りたスキーを試すと、ほとんど滑れないビギナー状態に戻っていて、一同驚いたことがあります。一番驚きの声をあげたのは本人で、20日のキャリアはほぼ消滅して見えました。帰りのバス内で、今後二度とスキーをしない決意表明のまじめな話を聞きました。その後、スキー板を粗大ゴミに出したそうです。


2 となると、100センチからスキーへの再入門は、絶望的なのか?

希望はやっぱりカービングスキーです。その20日スキーヤーはカービングスキーに、いまだに触ったことがありません。ちょっと戻ってみた板も難解な旧式スキーだったので、滑れるわけもありません。しかし今戻れば、平易なカービングスキーに「戻る」のではなく「進む」わけです。実際その時、私の方はというとカービングスキー一辺倒だったので、私がその旧式スキーを借りても、似たドタバタが起きたはずです。


3 旧式、100センチ、カービングの順で、う回してもスキーに戻れそうか?

戻れるはずですが、間に入った100センチで感激は減ります。普通に旧式スキーから直接カービングスキーに移ると、劇的に難易度が下がるので、うれしいショックを受けます。ところがいったん100センチに時間をさくと、旧式スキーの下積み分が衰えてスキー技術が白紙に戻るので、カービングスキーが難しく感じる道理です。ひとたび100センチに「降りる」と、次に「登る」ことになって、難しいと感じる逆のショックが起きる可能性です。


4 皮肉にも、旧式スキーの難しさが、スキーヤーの潜在能力を高めていたわけか?

それは自分についても、他人を見ても、思った以上にあるようです。カービングスキーに交換して、つきものが取れたように上手になるのは、直前まで旧式スキーでくすぶっていた人です。旧式スキーで過ごした20日は、本人がへただ、ダメだと言っている割には、バランス感覚や運動センスが思いのほか蓄積して潜伏しています。板の性能の悪さに押さえ込まれていたのです。


5 100センチとカービングスキーに、共通点はあるのか?

サイドカット半径の数字が似ています。旧式スキーがR40メートル以上、カービングスキーがR17〜8メートル、100センチはR9〜4メートルです。旧式スキーのみが離れた大きい数字で操作性が目立って悪く、100センチとカービングスキーは小さい数字で近接しています。


6 100センチとカービングスキーは、長さ以外に違いがあるのか?

板の本体は、ほとんど長さだけが違います。100センチがスキーにかなわない点をあげれば、パウダーに埋まる、きれいな丸いシュプールを描きにくい、ロングクルージングがしんどい、姿に優雅さを出しにくい、などです。これらは全て短さのマイナス面にすぎず、全長をあと60センチ伸ばせば改善されます。60センチ伸ばせば、そのままカービングスキーになります。


7 カービングスキーへの最後の抵抗は、プラス60センチが取り回せない点か?

むしろ重さアレルギーでしょう。ある時ゲレンデで、旧式スキーから100センチに転向した知人女性が、「一度カービングスキーを試したいので貸して欲しい」と言い出しました。話がポンポンまとまり、160センチを手渡しました。


8 やっぱり一度スキーをかじった人は、スキーへの関心が残っているわけか?

さあ滑れるだろうか、可能性を見出すのだろうか。ところが渡されて手にしたとたんに、「こんなに重いの?」と言ってその場で私に返しました。総重量に拒絶反応が起きてしまい、殻は破れませんでした。試していれば、別の展開があったかも知れません。当初スキーファッションにこっていたその女性も、今はウインタースポーツから去りました。


9 100センチに転向した人は、なぜそんなにも重さをいやがるのか?

もちろん100センチが軽いからに違いありません。160センチのカービングスキーは、100センチの1.6倍の長さですが、重さは1.6倍で済みません。2.5〜3倍にもなります。


10 子どもでも平気なのに、体格のある大人がスキーの重さがダメなのはなぜか?

スキーが特殊技能だからです。板の長さを利用してたわませ、弾力で跳ねて切り返す技能なしには、スキー板は長くて重い材木の荷物と変わりません。この点は自転車と同じで、乗れる子どもは大人用でも軽々と快走できます。しかし自転車を押して移動し、持ち上げて向きを変えるビギナーは、ペダルをこぐ軽快感がなく、子ども用の自転車でさえ鉄パイプ製の重い荷物になります。


11 カービングスキーは短めの割に、たいして軽くないのはなぜか?

短くても幅が広いから、同じ製法なら少し軽いだけで、160センチ片方で1.4〜1.9キロあります。決定的なのは本格的なリリース型金具(ビンディング)の重量で、片方で1キロ以上あり、流行のプレートも追加すると、スキーセット片方で2.5〜3.5キロになります。スキー板には体育の授業で使えて、めったに折れないだけの強度がいるし、20日スキーヤーでも時速60キロは出せます。丈夫で安全なように、この程度の重さに落ち着いています。


12 軽い製法もある一方で、わざと重く作られている板もあるそうだが?

粗い雪にはじかれない重さも必要なので、大回り系だけでなく小回り系でも、技術の限り軽く作らずに、金属材や端部のアルミ塊などで重くすることがあります。パラレルスキーヤーは誰でも、「好ましい重さ」という個人的な目安を持つようになります。上達につれて軽すぎる板は不都合になり、ややどっしりした板を必要とします。もっとも、軽くても安定する板こそが技術革新の成果でしょうが。


13 誰もがちょうどいいと感じる重さは、どのあたりなのか?

重さは慣れの問題で、どうにでもなります。私が持っている板も重量はまちまちですが、一番軽い板に慣れると、一番重い板は飛べず跳ねず、自分に合わないと感じます。ところがこちらに慣れると、一番軽い板は不用意に持ち上がって落ち着きなく跳ね回り、自分に合わないと感じます。単なる対比だとわかっていても、正反対の板への違和感は強烈です。


14 重ささえ覚悟すれば、100センチからカービングスキーに移れるわけか?

順を踏めば移りやすいでしょう。まず120センチで5日、次に140に伸ばせば、失ったスキーの動きが戻り、160のカービングスキーで滑り回れるでしょう。この未知のスキー板が、いかに旧式スキーと違うかに感じ入るはずです。するとアラ不思議、今度は軽い100センチに違和感が出るのです。

(後日談:2004年12月)
04−05シーズンに「ミッドスキー」なるカテゴリーが登場しました。120〜130センチで、金具は本格的なスキー用が付きます。この長さは98−99シーズンにはすでにありましたが、カタログに「100センチからカービングスキーへのステップアップ」を新たに書き加えました。120センチは140センチに比べかなり不安定ながら、スキーヤーはスキーとして、100センチユーザーは100センチとして、橋渡しに使えます。

(後日談:2005年2月)
そのミッドスキーをゲレンデで見かけない理由がわかりました。ある日、リフト隣の100センチ女性に話を聞くと、案の定、初級スキーからの転向です。パラレルの壁で挫折。ところが、130センチのミッドスキーの話を出すと雰囲気は暗転、不機嫌にホコ先をかわす言い方を始め、警戒心がありありでした。「口車に乗らないわ、スキーなんかに絶対に戻るものですか」と氷のようにカチカチの反応。すすめたわけでもないのにお断りにけんめいで、「あつものにこりてなますを吹く」状態でした。