スキー100年目の革命Q&A

52 カービングスキーでコブ斜面も滑りやすく


1 コブがスキー人生の縮図とは、どういう意味なのか?

コブ斜面に立った初級者は、斜面の恐怖以上に、その斜面で平然としている上級者の威容におそれをいだきます。コブの中を軽々と動き回るベテランのことを、違う世界の生き物に感じてしまうのです。笑顔の上級者と、心が悲鳴を上げている自分との差がもうひとつの威圧となり、暗い気持ちでスキーを捨てる人がいるぐらいです。


2 確かにスキー楽しといっても、一度コブに行ってから遠ざかる人もいたが?

コブ斜面を見下ろして肝を冷やした体験は、スキーを去る引き金になりやすいものです。当初は人間ワザではないとおおげさに考えがちです。私も例外ではありませんでした。上級者の実力を見せつけられると、あこがれよりも畏怖が先に立ちます。どうすればあのように滑れるのか、という人間的な好奇心や向上心が失せて、危険から逃げ出す動物の本能が現れてしまうのです。


3 先に理屈を知っておけば、予防になりそうだが?

「スキーはこりごり、デコボコでひどい目にあった」と、知人女性が何かの拍子に触れました。「デコボコを滑るにはコツが2つあって・・・」と私が切り出すと、「あー、その話は聞きたくない」と両手で耳をふさぎます。「デコで足を縮め、ボコで足を伸ばす」とだけ、耳に押し込んでやりました。聡明な人なので、「あっ、なるほど、そうか、わかった、要するに頭を一定の高さに保つんでしょ。視線の位置を変化させないんだ」と、自分で原理を導き出しました。スキーをやめた後でコツを知った例です。


4 しかし、なぜ初級者と上級者は、あんなに勇気が違うのか?

勇気に差はありません。自分が上級者になれば、ナーンダと思うはずです。「あの人たちのように急斜面に飛び込む勇気が持てない私は、スキーに向かないのでやめます」「自分は将来、あの恐い斜面に飛び込む勇気ができているか」「臆病なままの上級者になりそー」などは、どれも笑い話です。


5 上級者たちの果敢な滑りは、誰が見ても迫力があるが?

勇敢、積極的、勝ち気、過激、というキャラクターの人が上級者になる傾向があったりはしません。上級者は特に勇気なんて持っていないし、強い心臓も持たず、決死の思いで飛び込んだり、心頭を滅却したりもやっていません。「初級者は臆病者で、上級者は勇者」という事実はありません。


6 そう言われても、初級者の恐さは一向に消えないが?

永久に続くと思われた恐さが、コツを知って慣れて滑れるように変われば、消えるのです。自転車を思い出してください。乗れた人は、恐さを克服するメンタルトレーニングを行って、乗れたわけではありません。順序が逆です。日数をかけてバランス感覚が向上すれば乗れるようになり、乗れると恐さが消えて笑顔に変わっているだけです。心を鍛えた結果ではありません。日を重ねて腕を上げれば、恐い斜面だと感じなくなります。ガケや壁ではなく、ゆるい斜面に見え方が変わるのです。


7 そんなわけはない、コブ斜面はいつ見ても、同じように恐いが?

いつも知識不足で、いつも練習不足、いつも滑り方を知らないから、いつも恐いのです。先述の2つのコツを知らないと、凹凸が自分を転ばせる敵に回ります。ところが、コブはスキーヤーのブレーキ操作でできたので、成り立ちを追って便乗しブレーキに利用すれば、凹凸が味方になって滑れるようになり、すると愉快になるわけです。凹凸の利用法を知れば、ゆるやかに見えます。


8 ならば上級者は、どういう斜面が恐いのか?

その日、その時に、転びそうな斜面です。板を激しく取られる早朝の荒い氷だったり、たまたま新調した板が難解モデルとわかると、いつもは何でもないはずが急斜度に見えるのです。日が照って雪がほぐれたり、道具を改善するだけで、その場でゆるく見えます。またスキー板を複数持参した日、平易なスキー板に替えたとたんに、おっかな急斜面もゆるく見えて余裕で降りられます。


9 そんなにコロコロ変わる恐怖感の正体は、いったい何なのか?

その時、その場の、「成功率の予感」だと思います。


10 ということは、シーズン中でも、斜面の見え方は変化するのか?

例えば久しぶりにスキー場に来ると、駐車場から見上げた初級ゲレンデが意外に急に見え、「あんなに急だったかしら」と不安になることがあります。しかしリフトで上がって滑り出し、何でもないことを確認すると、再び見上げても今度はゆるく感じます。逆に、一目でゆるく見えた林間コースが、曲がりくねるうちにブレーキが遅れて2、3度転ぶと、とたんに急坂に見えた覚えもあります。


11 初級者がカービングスキーを使えば、コブ斜面も簡単になるのか?

ブレーキがよくかかるので、まずは転びにくくなります。食いつきのよさが利いて、50度もあるコブの裏側でも止まれます。25度はかなりのものだとか、35度は垂直だなどは、ブレーキの甘いずんどうスキーの話です。カービングスキーのブレーキ効果で、初級者は中級斜面へ、中級者は上級斜面へというように、より上の斜面がホームゲレンデになることでしょう。


12 カービングスキーでコブを行く時は、旧式スキーと似た使い方らしいが?

肩幅スタンスで両足荷重のカービングターンを、コブで行うことはなく、カービングスキーであっても旧式ふうに使います。やや狭いスタンス、外向外傾、体の伸縮、かかと押し出しなど、かつて当たり前だった操作を総動員します。コブ斜面では、旧式スキー出身組が強みを発揮します。


13 カービングスキーは、むしろコブ斜面で不利と聞くが?

旧式スキーは直線的に走るので、コブはかなり縦長になります。カービングスキーだともっと小刻みに板が曲がろうとするのに、縦長コブに付き合って間延びするうちに、エッジが立ってスピンアウトするのです。これは過渡期の現象かも知れません。ゲレンデがカービングスキーばかりになれば、できるコブの形も変化するでしょう。


14 コブを行くのに、板は長めと短めの、どちらがいいのか?

150〜170センチの普通のカービングスキーが現実的です。140センチまで短くするメリットは、コブのビギナーならあるでしょう。130以下に短くすると、ショックアブソーバーとしての板の弾力がなく、板がコブを味方につけなくなり、スキーの使い方から外れ始めます。滑るというより、ポトンポトンとただ飛び降りる感じです。逆に180センチぐらいの長めがいいという意見は、コブのベテランに多いようです。


15 コブに向かない板はあるのか?

硬くて重いと不向きです。硬い板だとエッジがいちいち引っかかり、あらぬ方へはじかれ重労働になります。私が最初に買ったR14メートルのエキストリームカーブは、かなり硬い板だったので、縦長コブで横へはじき飛ばされ、コースアウトばかりでした。主因は技量不足でしょうが、ならば軟らかめの板を選ぶのが得策です。


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