スキー100年目の革命Q&A

59 自分の道具を持てば、また別の落とし穴


1 レンタルスキーを借りる時に、注意すべきことは何か?

ずんどうな旧式スキーを借りない一点につきます。広島では99−00シーズンに、あるオールナイトスキー場が場内レンタルを全部カービングに替えました。しかしいまだ多くのスキー場では、普通に借りると旧式を渡され、あえて希望すればカービングです。そしてレンタル料は、旧式2500円に対しカービング3500円と割高です。旧式を借りると何が悲惨なのかを知らないと、1000円の節約で旧式を選び、1日を棒に振るかも知れません。割り増し価格の付かない方を、無難な標準と思うのがビギナー心理だからです。

(後日談:2004年12月)
04−05シーズンの某バスツアーのカタログを見ると、レンタルスキーの選択サイズが160〜190センチとあります。こっ、これは旧式スキーのサイズでは。私は今140センチR8.5メートルと150センチR11メートルを交替で使って、スキーで可能なあらゆるワザに恩恵を受けています。革命も何も知らずに、業界で否定された180センチR40メートルを予約する初級者たちがかわいそうです。


2 レンタルする程度のレベルでは、どちらのスキー板でも同じなのでは?

カービングスキーが猫に小判となるケースは、思い当たりません。ブレーキがよくききボーゲンが暴走せず、力んで雪を押さえなくても曲がって行く点が、入門者が得る大きな恩恵です。カービングスキーへの入れ替え予算がなく、旧式をかかえたレンタル店が、スキー人口のさらなる減少に拍車をかけている実態があります。


3 上達の近道として、自分の道具を持つべしと説く本もあるが?

それは正解で、今ならカービングスキーに乗り換えることが、まさに上達の近道です。初めての道具をいつ買うべきかは諸説あって、一般にはビギナー段階でレンタルし、初級段階で早めに所有するのが理想とされます。レンタルだと、毎回クセの違う板に変わりやすく、めざましく進歩する段階で振り回されるからです。ところが、スキー板を所有すればしたで、ある落とし穴があって、途中でスキーがヘタになる現象が起きます。


4 途中の落とし穴とは何か?

私はレンタルスキーで49日滑った後、初めて板を買った50日目は、確かによい結果でした。そこからキャリアを積んだ何年か後に、団体で島根県の新スキー場へ行った日、怪現象が起きたのです。中斜面に立ちスタートする瞬間に、その場にくずれます。斜面に立っているのがやっとで、足を一歩踏み出せばよろけます。何とかヨロヨロと滑り出しても、上体がぎくしゃくとこわばって暴走まっしぐらという。


5 どんなふうに暴走したのか?

急斜面、中斜面、緩斜面、いかなる斜面も、信じられないような、とんでもない大回りにふくらんで、目をひんむいて突っ走るばかりです。流して50ターンはできる500メートルのゲレンデで、かなり力んで4ターンがやっとという、極端なオーバーターンが起きました。今こうして説明していても、我ながらウソ話をしているかのような、不思議な大暴走が起きたのです。


6 スキーの基本操作を思い出して、何とかならなかったのか?

冷静に考え直し、色々と試したものの、ダメでした。体が一向に言うことを聞かず、途方にくれるばかりです。まるでビギナーと体を取り替えたかのような強い違和感があったので、バランス感覚がマヒする何らかの疾患を疑い始めました。脳神経外科の奇病かも知れず、神経中枢の不調や、筋肉の反射が悪くなる病気に見当をつけました。どうしようか、どの科で診察を受けるのか、入院は必要なのか、元の体に戻れるのかと、思いをめぐらせました。


7 結局、どんな病気だったのか?

3つのスキー場で丸4日無駄にした後に、病名がわかりました。「急性エッジ摩耗症候群」。スキー板のエッジが、過去にこすれて摩耗していたのです。エッジがナマって雪に引っかからないので、雪上でスリップして異常にターンがふくらむという・・・。斜面で止まって休んでいても、じりじりと板がずり落ちていき、その場に立っていることさえできずに意味もなく倒れ込んだ、その原因はスキー板のエッジ摩耗でした。


8 要するに、スキー板が故障していたわけか?

スキー板は減る物だったのです。フチにはめた鋼鉄製の角が、少しずつすり減っていきます。切れないハサミや包丁を使うと、裁縫や包丁さばきが不器用になり、あげくに肩こりや指を切るケガが起きやすくなる、あれと同じです。私の場合は旧式スキーで起きましたが、カービングスキーでもエッジが少し落ちれば、旧式スキーと同様に不安定になることも確かめています。


9 包丁の摩耗はすぐ気づくのに、スキー板だとなぜ気づかないのか?

スキー板は、物を切断するための道具ではなく、摩耗が目の届かない足の裏で起こっており、直接的に感知できないのです。しかも切れないハサミや包丁と違って、切れないスキー板は手元ではなく全身の不調として自覚するから、知識がないと私のように訳がわからなくなって迷宮入りです。


10 雪の上を滑っただけで、硬い鉄のエッジがそれほどすり減るものなのか?

暖冬が原因です。雪が多いと板は常に雪に触れ、パウダーでも湿雪でもアイスバーンでも、エッジの磨耗はごくわずかです。一度研ぎ出してバリを出せば、20日滑った後もほとんど同じバリの状態です。ところが雪が少ない時に岩や土の上をこすると、鋼鉄エッジの貴重な角がごっそり落ちて丸くなり、すると雪のホールドがウソのように甘くなります。


11 どうなれば、エッジ摩耗のサインなのか?

指の背中でエッジをなでて引っかかりがなければ明瞭ですが、滑っただけでもわかります。まず何となく、ないしは露骨に、へたになります。板が外へ逃げてターンがふくらみます。パラレルにそろわず、停止する時になぜか転倒します。板に体が遅れ、動作がぎこちなくなり、思うように力が入らず、疲れがたまっている気がします。体全体に余裕がなくなり、笑顔が消えます。意欲が低下し、早く帰りたくなり、次回はパスしたくなります。このようにエッジ摩耗は、スキーの楽しさをことごとく消し去ります。


12 それだけ症状が現れたら、スキー板の異常だとわかりそうなものだが?

初めて症状が起きた時、私には全くわかりませんでした。4日無駄にして翌年のシーズン前に、原因を頭で想像して、ひらめくように突き止めたのです。すぐにわからなかった理由は、数々の不調がビギナー間もない初級者の出来事に似ていたからです。パラレルから時間がたって十分すぎる安全圏にいながら、自分の内部の不調に結びつけてしまったのです。


13 調子の悪い日に、自分と板のどちらが問題か、区別できるものなのか?

答を知ってしまうと、もう最初から区別がついています。首をかしげるような突然の不調は、道具と雪質以外では起きないからです。謎めいた不調の一例として、突然できる靴ずれがあります。特に小回りが楽勝のスキーヤーの場合、足のかかとの上5センチあたりに水泡が2個ずつできていれば、板のエッジの摩耗です。


14 なぜ、足のそんな場所に水ぶくれができるのか?

エッジがなまったスキー板では、雪を踏み押さえても足場が一瞬外にずれて、板のたわみが起きません。バネのエネルギーが逃げると弾力が帰ってこず、板の切り返しができなくなります。すると本来それができていた上級スキーヤーは、無意識に補おうと、いつもより強く伸び上がり、足で板を引っ張り上げるように切り返し、谷回りに入ろうと力みます。その強く伸び上がる際に、靴の中で足が激しく上下動し、こすれて炎症(マメ)が起きるのです。


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