スキー100年目の革命Q&A

61 板以外のワンポイント点検


1 カービングスキー以前にも、板で何か革命はあったのか?

100年以上前の19世紀後半に、前回のスキー革命が起きました。板の側面に削り込み、今でいうサイドカットを設けたのです。雪上を行くソリだった交通手段が、ターンするスポーツ用品に発展し、わずかなカットながら画期的な発明でした。その後、単板から合板、鉄エッジのビス止め、金属板による補強、プラスチックコートなど部分改良が進みました。ついに1990年代、ヤケクソのようにサイドカットを深く削り込んだ、一見ふざけたような製品で、難しかったスキーの操作がポンと簡単になったのです。


2 板以外でも、カービングスキーのような革命はあったのか?

30年少し前に靴の革命があり、短靴から長靴へ変わりました。スキー靴の祖先は登山靴であり、1960年代は高さ10センチ程度の足首が見える皮革製で、今よりずいぶん小ぶりです。体が少し遅れると、コテンと後に倒れました。ところが1970年頃に高さ30センチ弱の長靴型に大変革すると、前後にもたれることができ、立ち姿勢がある程度アバウトでも転びにくく、悪雪や深雪も楽になりました。スノーボードの靴が長靴型なのも、スキー靴の影響でしょう。


3 せっかくのカービングスキーに合わせて、靴も新調すべきか?

現状で、故障、サイズ間違い、技量とのミスマッチがない限り、靴の買い換えは後回しでいいでしょう。私自身、レンタル靴によく見るリアエントリー型の91−92年製を、99−00年製エキストリームカーブスキーに組み合わせ、深回りのレールターンも楽勝です。いつか最新の靴に変えれば、よい効果はあるでしょう。その日が楽しみです。しかし従来の靴に単独で問題がないなら、カービングスキーにそのまま使って支障はありません。


4 リアエントリー型の靴は、バブルのスキーブームで一世を風びしたが?

後部がヒョイと開くリアエントリー靴は、レジャースキーでは好都合です。ゆるめると直立できる利点が大きく、雪上やレストラン、トイレでも歩きやすくなります。当時は9万円もの上級用や競技用も作られ、素早く着脱できる割に、しっくりと足を包む精度も魅力でした。しかしフロント部分までが一体なので、プラスチックの変形の範囲しか前へ押せず、前傾姿勢に制限がありました。また足の甲からすねにかけて、まんべんなく締める機構が組み込めず、強く締めてアイスバーンを行くアルペン競技に向かなくなり、レンタルと子ども用以外はごく珍しくなりました。


5 旧式スキー時代は、靴が一番重要だと言われたが?

靴は今も昔も一貫して重要です。旧式スキーの頃は、どれもほとんど差のない板のせいもあり、靴の性能や相性の方が、板よりは優先されました。私もそれに従い、スキー板のレンタル回数は16回49日に及びましたが、靴は先に買って3回17日にとどまりました。ところがカービングスキーが出て以来は、滑りを左右し、楽しさとスキー人生を支配するのは、完全に板の方です。靴が古いまま板だけカービングに変えて、飛躍をみてから靴を考えても間に合います。


6 ストックの選び方にも、上達の秘訣があるのか?

多くの場合、ストックを短めに替えると上達します。理由は、昔の教科書どおりの長さだと、ストックを突くたびに体が押し戻されて後にのけぞるからです。前傾が苦手で棒立ちが直らない人は、10センチ短いストックに替えるだけで、姿勢が改まります。


7 そんなに短くてもいいのは、やはりカービングスキーのせいか?

もちろんそうですが、そもそも以前の常識は明らかに長すぎで、持ってひじが直角になる長さでは、突くたびに体が押し上げられてしまいます。私はかなり腕が長めで、以前の常識では適正は115センチです。しかしこれだと後傾になりがちで、旧式スキー時代に105センチに替えて前傾の習慣を得て、カービングスキーでは適正より30センチ短い85センチに替えました。


8 さすがに、ウェアは上達に関係なさそうだが?

撥水(はっすい)性だけは大事です。79−80シーズン頃は、次なるスキーのおしゃれイメージはまだブレイク前で、服装が貧乏仕様でも違和感はありませんでした。普通のブルゾン(ジャンパー)が暖冬の雨で重く濡れて風邪にかかったり、サイズにゆとりのない手袋は冷たく、行動を鈍らせました。一番まずかったのは、最初に買ったサングラスです。皆でいっせいに滑っても、1人だけ途中何度も止まって涙をぬぐいます。後に風が吹き込まないタイプに替え、一度に長い距離を滑る良さを知りました。


9 止まらず、長く連続して滑る利点は何か?

5〜6ターンで区切って止まると、一発勝負的な勢いを繰り返すだけで、総合的な滑走体験ができないし、途中の試行錯誤もありません。ノンストップで長く滑ると、自分の平均値がわかるし、前半と後半で違うことを実験しながら比べたりもでき、あれこれ工夫を混ぜやすくなります。


10 カービングプレートで足元を高くすると、スキー板の性能は上がるのか?

スキー板と金具の間に取り付けて、靴を高い位置に上げるのがカービングプレートです。その効果は、@深いバンクでも靴が雪に触れない、A体の左右入れ替えが軽い力でできる、B板のたわみを制限しない、の3つが言われます。@は本当です。Aは使用当初に違和感があるものの、慣れると本当です。Bは私の持つ製品はウソで逆効果でした。


11 プレートでスキー板のたわみが、かえって制限されるのはなぜか?

市販の別売りプレートには、にわか作りのような製品もあります。プレートは金属製の文字通りの板や、中空プラスチックの台座になっています。ほとんどの製品のネジ止めカ所は、前後プレートとも前ネジと後ネジで、横から見ると4点止めです。6〜8個のネジで面状に止めるので、必ずスキー単体のたわみを押さえ込んで制限し、センター部のフレックスが硬化して、スキー板全体が丸くきれいに曲がるのを妨害します。


12 板のたわみを妨げないプレートは、考えられるか?

スキー板とプレートの接点が、センターのただ1点(横一線)ならいいのですが、ねじ穴が割れやすくて製造は難しいでしょう。原理上は、前後の2点をピン支持(接合部がたわみに応じて回る)すれば、たわみ阻害を極力減らせます。また別の発想もあり、プレートと合計して1枚のスキー板として機能する一体構造が考えられます。


13 ワックスは上達に関係するのか?

十分に塗らないと、パラレルがやりにくくなります。ワックスが落ちると、雪の摩擦で失速して前につんのめり、ターンが渋ります。回りにくくなって不快感もつのります。西日本で多いのは、ポカポカ日のシャーベット雪と、ブルブル日にみぞれが凍り付いた雪面で、いずれも摩擦でガクッと失速します。ちなみに世界初のワックス製品は、78年前の1922年だそうで、雪との摩擦が古くから問題にされていたことがわかります。


14 ワックスを塗ると、スピードが出て恐いという不安の声も聞くが?

初心者は誰もがそう感じます。私にも覚えがあります。ただ、ワックスを塗りたまえという説教はいりません。なぜなら滑りすぎの心理不安はほとんど初心の段階だけで、7日も滑れば湿雪でつんのめる方がよほど恐くて、逆に景気よく塗りたくなるからです。ワックスで滑りを良くしてやろうと思うのは、最初の上達の表れです。


15 スキーにワックスを塗って滑りを良くすれば、安全なのか危険なのか?

塗った状態が正常で、はがれ落ちると失速が思わぬ事故につながります。ワックスはスピードを上げる目的ではなく、下がるのを防ぐ目的で塗ります。買ったばかりの板の裏は研磨加工の上にワックス塗りでツヤツヤで、水をよくはじきますが、この状態でスキーは正常に機能します。滑るうちに雪の結晶が刺さり、また氷粒の角がこすれ、ソールの樹脂がザラザラして摩擦が増え、ターンが渋ります。そこでワックスで穴埋めして、初期状態に回復させるわけです。オプション的な機能アップとは違って、必須です。