スキー100年目の革命Q&A

68 なんちゃってカービングターンを解決する 2


1 シェーレンのクセをなくすのに、どれくらい時間がかかりますか?

ベテランスキーヤーたちはカービングスキーを口コミで知って、乗り替えてカービングターンを試しました。そしてシェーレンに板を先開きした、なんちゃってカービングターンで試しに滑ってみて、やがて板をパラレルに整えたリアルなカービングターンへと至っています。その移行期間は、10日以上でした。


2 そのくらいの日数でいいなら、話は早そうですが?

ただしこれは、カービングターンへの移行にさっさと成功した人の場合です。同じ時間滑ってシェーレンのまま取り残され、何年もたったケースでは、成功者と同じプロセスを今からたどって済むのか、実は疑問もあるのです。


3 そもそも、なんちゃってカービングターンで取り残された人は、何が違っていたのですか?

カービングスキーを買った時に、この道具の意味や効力を、あまり深く考えずに使ったケースもあったかと思います。従来と抜本的に滑り方を変えなかった理由として、「自然体志向」もありました。何人かから聞き出してみると、今の自分の方法は自分にとってやりやすいゆえに、それを自然体だと信じているフシがあります。これはプロ野球選手が陥りやすい、打てなくなる袋小路に似ています。


4 取り残されずに、シェーレン癖をクリアできた人は、何が違っていたのですか?

カービングターン成功組に目をやると、まず大回転競技のイメージを持った人が、実は多いのです。旗門やポールをくぐらなかったにしても。「うわっ、すごい、あんなことがこの新しい板でできるんだ」と。


5 当時の雑誌がカービングターンの説明で、レースの滑走写真をよくのせていましたからね?

大回転競技でカービングスキーが活躍した長野五輪からしばらくの頃ですが、そうやって目標のイメージを描いた人はカービングターンができて、描かなかった人は、なんちゃってにとどまった傾向も考えられます。雑誌のビジュアルは、結果的には指導的な効果がかなりあったことになります。


6 そうしてリアルなカービングターンができた人は、具体的にどういう移行練習をしたのですか?

純粋にレール・ターンの練習をしました。「これがカービングターンだ」と、はっきり自覚しながら。まずパラレルスタンスを広めにして、次に内足を内倒させ、小指側エッジにも体重を乗せて、両足荷重にします。


7 そこが、恐いんですよね?

両足荷重が恐いのは、小指側エッジを利かせると、うっかりスタンスがどんどん広がって、股さき状態になる不安があるからです。実際にはカービングスキーでそれが起きても復元しやすいのですが、心理的には不安なので、ついつい内足荷重をひかえめにして、持ち上げたりずらしたりで、やりくりを始めてしまいます。


8 そこを直すために、何か秘訣でもないのですか?

ひとつは、外向外傾の姿勢でレール・ターンを行うことです。この姿勢だと、内足が前に出て、テール荷重になります。トップよりテールの方が操舵力が弱いので、内スキーの支配力が下がって、不正確なエッジ角度でも雪にとられなくなり、内スキーの小指側へ体重をかける恐さが一気に薄れます。これで、アウトエッジを強く押せます。


9 でも恐怖心がある限りは、そこでまたシェーレンに構えてしまいませんか?

盛大な外向外傾の姿勢をとれば、左右のスキー板に盛大な前後差が生じます。前後差が大きいと、実はシェーレンに構えにくくなってしまうという、意外な効果もあるのです。


10 そうして小指側エッジを使い始めたとして、次にどうやって完成させていくのですか?

アウトエッジへの荷重に慣れるに従って、少しずつ外向外傾をゆるめて、内向内傾ぎみにもっていけば、穏便に解決します。中間チェックとして、両スキー板を60センチ離した超ワイドスタンスでカービングターンをやれば、内スキーが使われているかが確実に点検できます。この手順で、小指側を常に使うよう全身の初期設定が変わり、7対3や、6対4の両足荷重がホームポジションになっていくのです。


11 小指側エッジを雪に切り込む時、その傾きの角度は、どうやって割り出すのですか?

いい質問です。傾け方が小さいとX脚ふうになり、内スキーはまたもや仕事をしなくなります。正解は、内足のひざ下角度が、外足のひざ下と平行か、それよりややX脚ぎみです。最初は目安がわからないはずで、ビクビクしながら続けるうちに、傾き量が定まっていきます。もちろんその間、あれこれ考え、角度を加減することになります。


12 カービングターンができる人は、それだけ色々とやっていたのですね?

ゼロからのスキー入門と違って、元中上級者は旧式スキーに慣れていることが、逆にハンデとなる部分があったわけです。そこの部分は、何となく解消はせず、意を決して突き抜けていった人が多いのです。


13 ともあれ両足荷重と聞いただけでは、複雑で恐そうに思えてしまいますが?

実際には、4本のエッジが不規則に使われるのではなく、「右エッジ2本」と「左エッジ2本」が交互に入れ替わるだけです。しかもその2セットの2本は、ひざ下の同調によって同時操作されます。右足と左足の動きに時間差やら順番がないから、一見高度なテクにみえる割にはかえって簡単なのです。


14 内スキーが使えるようになれば、何が変わってきますか?

谷回りがきれいに連続します。すると、ゲレンデに残すシュプールが変化します。鉄道レールのように、2本の細い線が彫り込まれ、谷回りへの切り替えのカ所で、テール幅分だけ離れた位置にパタンと線が移動します。対するなんちゃってカービングターンだと、内スキーが雪に食いつかずにずれて、引きずった跡として残るのです。


15 ここでもまた、谷回りが顔を出してくるのですか?

シェーレン癖がある人は、要するに内スキーに乗れていないので、谷回りに入る瞬間に重心の適正位置がピョンとワープして断続します。その不連続部で、内外スキーの機能をいちいち仕切り直すことになり、どうしても交互踏み換えやステップ操作になって、次期外スキーが独走する瞬間が生じます。しかも、向きが異なるスキー板に乗り移るのだから、その調整操作で一瞬足元がごちゃごちゃします。このため、次期内スキーだけでなく次期外スキーをも、少しひねり回す癖が出るのです。こうして、切り替えでターン弧がカクンと折れます。


16 ああ、わかります、微妙にジグザグターンになっているのですね?

円弧をつなげたように描く、なめらかなカービングターンでは、スキー板自体がレールを行く列車のように進みます。右ターンから左ターンに変わるその瞬間に、板は単に前に抜け出るだけ。


17 進む向きを変える瞬間に?、前に抜け出るとは、どういうことですか?

山間部をぬって走る列車は、右回りから左回りに変わる境目の一瞬前と一瞬後で、進行方向を変えません。突然折れ曲がる動きはどこにもない・・・。バスケットボールでいうピボットの旋回がどこにも入らず、ただ前へ前へと突き進むだけです。こういう動きをスキー板にさせるには、両足を同じ角度に倒して、左右スキーを同じ役割で使えばうまくいきます。内スキーは外スキーのコピペです。


18 新しいカービングスキーに入れ替わって以来、そこまで滑り方が変化していたのですか?

両足荷重の両足同時操作を行うことで、「内スキーの処理」という古典的な難問は消滅しました。しかし、なんちゃってカービングターンは、その難問を背負い続けています。背負っている人が最新の教習を受けて、腰の位置や向きや重心や前傾をいじっても、そこが問題点ではないから、後ですぐに元に戻ってしまうわけです。


19 改革が必要なのは、上体の姿勢ではなくて、板のスタンスの方だったのですね?

クリスマスにサンタクロースが乗るそりを、トナカイが引いて雪を蹴立てて滑る時、この「そり」に付くスキー状の板は、左右が平行に組まれていて、その状態でターンします。いちいちハの字にはしません。この感覚です。上部に組んだキャビンの向きや角度を、あれこれ変えてみても関係ありません。


20 そういうふうな視点で、遅れて内足革命に成功した人は、実際にいるのですか?

私の担当では、一人をシェーレン癖からパラレルに変えることができました。腰の向きや重心位置などの話を一切やらないで、スタンスの指導だけで通しました。


21 うまくいったのは、何が良かったからですか?

その人はまず、自称「ダメなほう」。しかし謙虚にはみえず、世事には批判的。そして案の定、物事を試すことが好きで、「マイペース」主義とは違いました。袋小路から引き返して、ああやったり、こうやったり、手法のカタログ攻めと、タブー立ち寄りについてきてくれたので、技術を「捨てて、取る」ガラガラポンができました。


22 やっぱり唯我独尊だと、だめですかね?

そんな大げさなものではありませんが、静かな信念は障壁です。「斜面を無の境地で下に落ちている自分」式の自己分析は、たいてい外れています。内スキーの動きが唐突で、時に足が迷って転倒も起きているわけで・・・。時々は、「他の方法もないのか」と軽い探求心を持てば、どんな遊びの中にも新発見と別天地があります。


23 ところで、外向外傾でレール・ターンを試す案は、どこから思いついたのですか?

1998年と2010年現在の、姿勢の違いです。当時は外向外傾が当たり前でした。板が平行のカービングターンも外向外傾のまま試したので、偶然、有利にはたらいたのです。こうして、さっさとカービングターンに成功した人たちは、2004年頃から「正対」や「内向内傾」に変更しました。新たなこの「正解」にカービングターン未習得の人が従うと、内スキーの操舵力が大きくなるだけに、板を平行に置くハードルが上がったのでは、と推理したわけです。ちなみに板のサイドカット半径は、98年の方が大小まちまちだったので、この件の要因ではないでしょう。