スキー100年目の革命Q&A

69 スキー初級者、目指すはスーパー大回転


1 スキー歴10日の初級者は今、何から始めればいいのですか?

スーパー大回転です。目標はカービングターン。


2 まだボーゲンの初級者なのに、時速100キロのレースを目指すのですか?

実は、時速20キロです。先に言うと、どのレベルの練習も、競技指向のカービングターンを基軸にします。割り振りは、初級者がスーパー大回転、中級者は大回転、上級者は回転を目指します。


3 そもそもカービングターンを初級でいきなり目指して、難しくはないのですか?

そもそも平行置きに有利なスキー板を使っておきながら、平行にしない練習に徹すれば、後で伸び悩みます。なので、真っ先にやることは平行スタンス。としても、なぜ平行だけでなく、切るカービングターンまでを目標にするのか。それは欲張ったのではなく、難易度の問題です。平易な順は、@大ざっぱにずらす、A切る、B正確にずらす。この順に試せばいいわけで、@は現にやっているから、次はAの番です。「皆さん平行で切りなさい、無理ならハの字でずらしなさい」の二択で始めます。


4 しかしそれが、スーパー大回転である意味は何ですか?

大きく回るロングカービングターンだからです。スーパー大回転の映像を見れば、選手は板に乗っかって運ばれ、ゆるやかに回っています。リズムが比較的スローで、それほどクイックな動きはない・・・。スキー板を小刻みに押し引きしたり、素早く体をくねらせたり、大きく身を乗り出す場面も少なめ。


5 では具体的に、何をやればいいのですか?

まずカービングスキーをつけて、一番ゆるいゲレンデに行きます。手始めはプルークボーゲンで、バランス感覚の調整。簡単なことから始めて、スキー板の感触を確かめます。外スキーを押して、内スキーは雪に置くだけで特に押しません。慣れると、板は平行に近づきます。そこまでなら、できている人もいるでしょう。


6 そこからスタンスをジリジリと狭めていくのが、昔の練習でしたね?

スーパー大回転なので、スタンスを狭めません。両板を40センチ離して平行に置きます。目的は平行。スタンスが広いまま直滑降を試します。次にターンを加え、頃合いをみて内スキーの内エッジだったのを、外エッジ(小指側)を使うよう足の構え方を変えてみます。板を離して、両足荷重の癖をつけていきます。


7 板を平行に置いて両足荷重に変える時、どこが難しいのですか?

外足と同角度に内足を倒す体験が、日常生活にない点です。両ひざを離して身を低くする姿勢に、いきなり違和感が生じます。内足が傾かずに、垂直に立ってX脚になってしまう、すると内スキーが雪にフラットに接し、役割があいまいになり不安定です。その、あいまいな状態でいいから滑り降りて、新鮮な違和感を試してみます。


8 外足一本に乗る昔の練習は、もうやらないのですか?

当面は不要です。外足一本に乗る瞬間は、今後もしょっちゅうありますが、それを意図して体に刷り込む時間は当てません。


9 途中に、シュテムターンをはさまないのですか?

山開きや谷開きは、カービングターンよりも難しいので、先にやるのは困難です。しかも足を左右乗り換える際に、あえてハの字に開き出すシュテム操作は、内足を動かす習慣づけにほかなりません。今や、こうした複雑化もマイナスです。第一、「片足から片足へ乗り換える」という概念が、旧式スキーとともに終わっています。あっちへ移す、こっちへ移す「体重のピンポン」は、21世紀のスキー習得にはじゃまなのです。


10 乗り換えないとすれば、荷重をどうやって変化させるのですか?

荷重割合を5対5から、9対1まで、連続的に変える発想にします。体重をピンポイントには移さないようにして、片足が遊ぶ瞬間をつくらないわけです。


11 初級者がスーパー大回転を目指すこうした発想は、どこからきたのですか?

子どもの指導現場です。子どもは最初にプルークファーレンで滑ります。ハの字の直進。次に高速プルークボーゲンに進みます。これがつまり、ハの字のスーパー大回転です。うんと大きいリズムで回ります。どれほど大きいかといえば、200メートル進むのに2ターンしかやりません。


12 直滑降同然の2ターンを、4ターン、8ターンと増やしていくわけですね?

200メートルで8ターンに増やせた頃には、外スキーと内スキーを同時にヒョイと倒し、姿勢を一気に反転させる動作が出始めます。


13 昔のように、内スキーを持ち上げて置き直す子どもは現れないのですか?

斜度がゆるいから現れないのです。直滑降で暴走しない程度の斜面なら、子どもたちは深回りせず、下へ下へと滑ります。 ターン弧が勝手に浅くなるから、内スキーを雪につけたまま突っ切れて、板を置き直すほどの破綻が起きません。このメリットを考えれば、従来の大人がやってきた初級練習は、斜度がやや急すぎました。


14 ゲレンデの斜度がきついと、何が一番問題なのですか?

ブレーキ操作です。長年感じていた不合理は、「ターン」と「スピードダウン」が入り混じっている点でした。曲がる作業に、速度をおさえる作業が混線しています。そのせいで話もゴチャゴチャ、動作もゴチャゴチャ。


15 スキーは難しいのだから、それで当たり前だと思っていましたが?

先生が曲がる話をしゃべっても、生徒はスピードダウンと闘っていて、言われたことを試せず、時間だけが過ぎました。「雪をしっかり押さえなさい」など、高度なフィーリングを言われても、生徒には不可解なだけ。ブレーキ操作が遅れるとドバーッと暴走して、下の方まで落ちてその回は失敗。スピードを落としきれない生徒は、恐さに参って次々と去っていきました。バンジージャンプじゃないのに・・・。


16 以前は確かに、暴走を食い止めようと足を突っ張って、生徒の足腰はクタクタでしたね?

スキーが過労とキモ試しだった過去の反省に立ち、純粋に曲がる操作だけを抜き出して、いきなりカービングターンを目指すのがこの方法論です。十分ゆるい斜面でブレーキ操作の出番をなくし、直滑降からだんだんと蛇行を深めて、ターンをふくらませていきます。直滑降から肉づけして発展させるのです。


17 従来の大人の練習では、直線的な浅いターンをあまりやらなかった気がしますが?

斜度がもう少し急なゲレンデを使ったせいです。すると皆さん、スピードが出すぎないようにと、深い蛇行から始めます。下へ滑るのではなく、横へ横へと向かう感じで、山回りに谷回りがつながりません。山回りに山回りをつなげるハメになって、谷回りらしきが消えてしまい、その存在に気づく機会もなかったのです。


18 そんな斜面だと、もし谷回りを試してもスピードが出すぎたでしょうね?

その結果、進行方向ががっくり折れて連続せず、内足を持ち上げて置き直す以外にやりようがなかったのです。すかさず先生がそれを注意しても、できる範囲の最善なのだから、意味がありません。しかも、そのガク折れのつじつま合わせとして、難解なシュテムターンがつけ足されていました。


19 直線的に滑っていれば、ハの字のずらしから平行のカービングターンへと、いつの間にか変わるものですか?

誰もが人為的に変えます。全員がどこかの段階で、内スキーの外エッジ(小指側)を使うよう、決断する場面が来ます。子どもたちの練習でも、指導者が個別に指示します。時間が貴重な大人の場合、この決断を無駄に延期しないで、「目標はこれ」と先に到達点を見せて、夜明けを準備します。しかし「じゃあ」と試せば、いきなりスッテンコロリンではおもしろくないので、不安定な足元でもとりあえず突っ切れるように、ごくゆるい斜面を使います。斜度で難易度を思いっきり下げて、シミュレーション的に練習して、原理そのものを把握するわけです。


20 スキー歴10日の初級者が、一日中ゆるい斜面でスーパー大回転をやるのですか?

半日だけです。残り半日は、もっと急な中急斜面へ遠征し、ブレーキもたくさん使います。カービングスキーだと、かなり急な斜面でも降りられますが、そこでレール・ターンは試せません。だから、カービング専科の時間を別に用意するわけです。カービングターンを応用編ではなく、基本編に入れることで、久しぶりにスキーに戻った人でも、昔との違いを午前中に体感できるようにします。