戸次氏苗字の由来


     「戸次」は通称「べっき」あるいは「へつぎ」と読む、稀に「とつぎ」と読む方もいる。
    一般的に大分市やその近隣、福岡市、柳川市などで「べっき」大分県豊後大野市や竹田地方では
   「へつぎ」と呼ぶことが多い。「戸次姓」は極めて少なく、全国でも400戸余りの少苗字である。
   「戸次」の意味は良く分らないが、「戸」は人家の区割りに由来し、「へ」が「へい」に変化し
   「閇(塀)」となった。「閇」は門の下である。よって、「戸」は家の入り口を意味する。
   また「次」は後に続くことをさすので「戸次」は家々の続くところを意味し、集落を指すと解せる。

   「戸次姓」苗字は12世紀後期、豊後国戸次庄(へつぎのしょう)で誕生した。
     姓祖は諸資料の分析より「豊後大神氏」の「大神惟澄戸次惟澄)」とされる。
   (大神系姓氏系図の戸次氏部分には、疑問のものが存在するので注意を要す)
   惟澄については「
惟隆」「惟唯」 と書かれた資料もあるが「惟澄」が通説である。惟澄は大和
   大神氏(ヤマトオオミワシ)の流れを引く豊後大神氏(ブンゴオオガシ)一族で平安後期の武将。
   豊後國戸次庄に蟠踞、庄名「
戸次」を苗字とした。源平合戦にも参加。
   平家の家人であったが大神惟榮(緒方三郎惟栄)と平家に反旗、このことは平家物語、源平盛衰記
   にも記述がある。 
            
                   参照「大神氏系戸次系図

       「源平盛衰記・宇佐公通脚力附伊豫國飛脚事の部分抜粋」

         ・・・・同十三日、宇佐大宮司公通カ脚力トテ、六波羅ニ著状ヲ披クニ云九國住人菊池次郎高直、
         原田大夫種直、緒方三郎惟義(惟榮)、臼杵、別槻(べっき・戸次、他の章では戸槻部槻とある)、
         松浦黨ヲ始トシテ、併謀反ヲ發シ、東國頼朝ニ與力シテ・・・・

    この「別槻戸槻」について研究者の間では戸次惟澄を指すとしており、豊後の英雄「緒方三郎
   惟栄」とは従兄弟関係にあったとしている。この事は大神系図でも確認できる。
   このことは系図のページでも詳しくふれる。
   惟澄の生没ははっきりしないが「源平盛衰記」によると、寿永2年8月安徳天皇を警護して平家の
   大宰府下向に加わっていることから、12世紀平安後期に活躍したと武将とみられる。
   しかし、こののち鎌倉時代には入り、戸次惟澄には世継ぎの無かったことから豊後國入り
   した
大友能直の孫「重秀」を養子にしたする下記のような説がある

       「大友文書録」  戸次重秀生マル  是年寛喜二年(1230年)親秀次子生于豊後
                  後年爲戸次次郎惟澄養子  號 戸次次郎左衛門尉

   

       「大友松野系図(常楽寺蔵)」 初代重秀  戸次次郎左衛門尉 母同頼泰
                  戸次次郎惟誰(澄)大神而惟基苗裔也 養以爲子
                  故居住豊後國大分郡戸次庄市村依之代々以戸次爲稱號トナス 

     但し、この養子説は疑問がある。大友文書録の重秀生年寛喜2年(1230)が正しいと
     すれば戸次惟澄の活躍した時期より50年も後となる。また大友氏が豊後に下向するのは
     重秀の兄、大友氏三代頼泰の頃で、早くて1269年である。
     次の都甲文書「大神系図」の記述の方が真実味がある。

        「都甲文書・大神系図」

                         惟隆(澄) 依無子息譲所領於大友豊前々司能直


  「大神系戸次氏」は惟澄一代で終わり、大友重秀」を初代とする「大友系戸次氏が誕生したの
  である。  
                 参照「大友氏系戸次系図

  重秀は、京中の非法を取り締まる強い権限を持つ検非違使(現在の検察、警察)に任じられている。
  戸次氏は代々戸次庄「
市村」に居を構えた。
 
  尚、熊本県の菊陽町に「戸次(トツギ)」という所が有るが、豊後の「戸次」との関係未調査。    
  したがって、このページでは触れないものとした。
                                     (参考文献)    大分縣史料 9 ・31・34
                                                        大分縣史(中世編)
                                                        豊後國荘園公領史料集成五
(下)
                                                        大分歴史事典(大分放送)
                                                        豊後國志(岡藩)
                                                        日本の苗字事典  (柏 書房)



                              表紙へ