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雨水利用 |
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長崎県の離島における雨水利用
雨水利用が社会を変える
ドイツ・ベルリン市の雨水利用の取り組み |
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長崎県の離島における雨水利用(濱砂博信=長崎総合科学大学助教授) |
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長崎県の離島では、現在でも生活用水を雨水のみに頼っている島がある。すでに淡水化装置を導入して水道施設が整備された地区もあるが、その地区でも大半の家庭に雨水利用設備が残っている。
下五島福江島の東に面積1.4㎢の黄島がある。この黄島には1990年に太陽光発電による海水淡水化装置が導入され各家庭に水道が引かれた。それまでは生活用水のすべてを雨水に頼っていたため、島の住宅の庭には必ずレンガやコンクリートでつくられたタンクがある。古いタンクは、レンガ造りで深く掘り下げたタイプが多く、市の補助事業で設置されたコンクリートタンクは容量が15m3と大きい。現在はタンクからポンプで台所に送水しているので一般の水道となんら変わらない。
雨量は福江島よりやや少ない傾向にあり、雨水だけでは生活用水が不足しており、風呂を沸かす日も週に数回だったという。山裾に小さなため池があり、かつぎ桶での水汲みが島での日課であった。飲料水としての雨水の水質を維持するためにさまざまな工夫がなされていた。いまでも鳥の糞などから汚染を防ぐため屋根に魚網を張っていることもある。また降り始めの雨水はタンク外に捨て、雨水で屋根の表面を流した後タンク内に取り込む工夫をしていた。
太陽光発電海水淡水化装置はNEDO(新エネルギー産業技術開発機構)の実験施設として設置され、1990年に実験が終了し福江市に譲渡された。1999年から本格的な逆浸透式海水淡水化プラントが完成し、長崎県では外海町、小値賀町などに次いで8箇所目となる。黄島の淡水化装置の造水能力は1日24m3でオゾンガスによる殺菌、脱臭、脱色を行っている。2000年度の人口は47世帯68人で、淡水の水道使用量は最も多かった5月で251m3、少なかった11月で174m3であった。雨水を現在も使っている家庭が多いため、通常の水道使用量に比べて非常に少ない。
雨水と淡水を併用しているケースが多く、どちらか一方だけを使用しているケースは稀である。
・雨水のみ 9%
・淡水のみ 9%
・雨水と淡水の併用 82%
雨水を飲料水としている家庭が43%で淡水よりやや多く、その理由として「おいしい」と答えている。
各家庭の雨水タンクから採取した雨水の塩分濃度は海岸からの距離との相関が見られる。屋根にはさまざまなものが飛来、堆積し汚染される。初期の雨水を捨てて水質を維持する考え方は、都市部の住宅向けに開発された雨水利用システムでも独自の工夫が見られ、今後の課題でもある。
雨水利用を都市の渇水対策だけでなく、都市に降った雨水を一時貯留することによる洪水対策として進めていく考えもある。
雨水は都市河川下流の水源を活用した都市型浄水場の水源より由来が明白で、汚染経路は屋根への降下、堆積物であり、大気汚染による影響を考えればよい。かつては雨水を利用する離島の高齢者の仕事であった初期雨水の分離や鳥の糞害対策、適切なろ過、消毒の対策が取られれば雨水は良好な水源といえる。 |
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雨水利用が社会を変える(村瀬誠=NPO雨水市民の会事務局長) |
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最近の雨の降り方がおかしい。短時間に100mmを超えるような「異常豪雨」が各地で多発している。雨水排除の役割を担ってきた下水道や河川がまったく 歯がたたない。21世紀は、異常豪雨の頻発に加え、大渇水も危惧されている。四国の早明浦ダムは、2007年に引き続き、2008年も渇水に見舞われた。1995年の「阪神・淡路大地震」以降、「新潟・中越地震」、「福岡・玄海島地震」と、大地震が各地で起きている。大洪水・大渇水、そして大地震といった自然大災害に、どのように立ち向かっていくのか、都市における新たな水の危機管理が問われているのではないか。
東京では、下水道が雨をさばききれず都市型洪水が多発している。緑を切り倒し、大地をコンクリートとアスファルトで打ち固めてしまい、浸透できずに行き場を失った雨水が一挙に流出、短時間に下水道に集中し下水の逆流が頻発するようになったのである。昨今の短時間集中豪雨がこれに拍車をかけている。
これからは、降った雨水を下水道で「いかに速やかに流すのか」ではなく、タンクに溜めたり地下に浸透したりして「いかにゆっくりと流すのか」といったように、都市治水における発想の転換を図るべきではないだろうか。2007年3月には、国土交通省が「都市における安全の観点からの雨水貯留浸透の推進について」を通達した。昨今の異常豪雨に対して、下水道や河川で雨を徹底的に排除する考え方だけでは限界があり、雨水の貯留と浸透の推進を打ちだしたことである。国も都市の雨を徹底的に排除してきた誤りに気づき、ようやく治水の発想の転換を打ち出したといえよう。
第二は、水源の「依存」から「自立」への転換である。東京は水が足りないといっては、利根川上流に多くのダム開発を求め、水源の利根川への依存度を高めてきた。しかし、上流への一点集中型の水資源政策は、水源地に雨が長期間降らないと下流の大都市が機能マヒに陥るという弱点を持っている。また巨大なダムの建設は、膨大なエネルギーとコストがかかり、なにより上流の人たちに多大な犠牲を強いることになる。とすれば、東京はこれ以上の上流への水源の依存を止め、雨水や地下水などの身近な自前の水源の有効活用や節水によって水需要の抑制を図り、できる限り水源の自立を図っていくべきではないか。都内の住宅が150万戸、それらの屋根面積を平均60㎡として、ここに降った1年分の雨をすべて溜めたとすると総貯水量は1億2600万トンになる。これは、利根川上流の下久保ダムの貯水量に匹敵する。正に無数のミニダムは巨大なダムに匹敵するのである。
第三は、「ライフライン」から「ライフポイント」への転換である。
1995年の「阪神・淡路大地震」では、水道やガスなどのライフラインが壊滅的打撃を受け、神戸市では最長1ヶ月間断水した。ライフラインに全面依存した都市が大地震にいかにもろいものか。これからの都市防災は、雨水や井戸水などの「ライフポイント」の強化へと発想を転換すべきではないか。町の中に小規模な水源を分散して整備することは、これからの都市の防災自立の基本であるように思う。
都市における雨水利用は、治水、利水及び防災という三つの役割を持っている。1985年に完成した国技館では、当時深刻だった両国地区の都市型洪水を防ぐために8400㎡の大屋根に降った雨水を1000m3の地下貯留槽に溜め、その雨水を相撲興行時のトイレや冷房用の水として有効活用する一方、災害時にはライフポイントとして防災や生活用水として活用するのがならいだ。墨田区からの日本相撲協会への申し入れによって実現した。以来、墨田区は都市型洪水の防止及び水源と防災の自立を目指し都市にミニダムを普及する観点から、新たな公共施設に積極的に雨水利用システムを導入してきた。その結果、墨田区では雨水利用を取り入れたビルや集合住宅などの施設数が2008年11月で152となり、家庭用小型雨水タンクの設置に助成を受けた住宅数も200を超え、その貯水量は約1万2800m3になった。さらに、墨田区は2008年7月から、民間の集合住宅(敷地面積500㎡以上)を対象に、雨水利用を条例化した。
雨水を活かす社会にしていくには、第一は、法律や条例などの社会の枠組みの整備である。すでに千葉県市川市では、雨水の浸透と利用を条例化している。先述の国土交通省の通達は、治水の観点からの雨水の貯留及び浸透にとどまっているが、国はこれをさらに進めて、利水、防災及び環境の面まで観点を広げ、都市の雨水を総合的に管理する雨水基本法へと発展させるべきであろう。また、現在60を超える自治体で雨水の利用と浸透の設備設置に対して助成が行なわれているが、これを全国の自治体に広げていきたい。
第二は、技術及び製品の開発である。雨水利用の鍵は集水と貯水である。集水に関しては、雨水の取水と排水ができる装置や、汚れた初期雨水をカットできる分岐装置が開発されている。いずれもこれらは雨どいの途中に組み込むようになっている。まだ個人住宅のレベルにとどまっており、今後、ビルや集合住宅など大規模施設向けのさらなる開発が求められる。貯水については、雨水タンクの多くが草花の散水用の1m3未満の小規模なタイプがほとんどで、トイレまでカバーできるタイプが少ない。また日本には、雨水利用の技術基準や製品規格がないが、ドイツでは日本のJISにあたるDIN規格で雨水利用システムが規格化されている。
第三は、技術者の育成である。法制度や基準ができても、実際に設計施工できる雨水の技術者がいなければ雨水利用の社会化は実を結ばない。散水からトイレ、洗濯、将来は風呂にいたるまでトータルに接消え施工できる企業の育成も大切だ。
第四は、普及と啓発である。とくに子供のころからの雨の環境体験学習は大切で、そのためのツールとプログラムを開発する必要がある。
第五は、拠点の整備である。墨田区には小学校の廃校を利用して2001年に開設した「すみだ環境ふれあい館」の中に「雨水資料室」がある。ここでは、雨水利用の背景や国内外の実例が紹介されている。また、雨水利用のノウハウが実体験できる雨水ハウスもある。
第六は、雨水のナットワーク化である。雨水利用を社会の仕組みにしていくには、産官学民の雨水利用の取り組みを持続可能な形にしていかなければならない。2008年8月6日、「雨水利用自治体担当者連絡会」(参加自治数130)の呼びかけで、雨水に関係する国、市民団体、事業者団体及び日本建築学会産官学民の関係者が墨田区に集い、雨水に関するゆるやかなネットワーク組織である「雨水ネットワーク会議」が発足した。 |
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ドイツ・ベルリン市の雨水利用の取り組み(中臣昌広=東京・文京保健所) |
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1998年、ベルリン市中心部の再開発地区・ポツダマープラッツにオフィスビルやショッピングセンターなどの19棟の新しいビルができた。このビルの一角に周囲約300mの雨水を貯めた人口池がある。
19棟のそれぞれの建物は、屋根に降った雨をいったん地下の貯留槽に貯め、トイレ洗浄水、植物への散水、池のに利用している。
池に入った雨水は常に機械的に循環、ろ過され浄化が行なわれている。池と下水道幹線とは連結されていて、池からあふれた水が下水道へ流れる仕組みになっている。
池に接したビルでは屋上緑化が行なわれている。屋根に降った雨は、植物が根を下ろした土壌部分を通過してから地下の貯留槽へ運ばれる。つまり、雨水は土壌中の微生物に接しながら流れるので、土壌のフィルター作用と微生物の浄化作用を受けて、水質を上げてから地下の貯留槽へ移る。その水の一部が池へ運ばれる。
雨水を利用した人口の池は、実際には大きな池といくつかの小さな池とがつながり「人口河川」と呼ばれている。最深部は180㎝だが岸に近いところは足のひざくらいの深さになっている。池の縁は階段状になっていて歩行者が気軽に水辺に親しむことができる。
ベルリン市では都市計画を策定するにあたって、雨水利用の可能性を調査するためのモデル地区を設けた。このモデル地区は86世帯で150人が暮らす5棟の建物で、それらの屋根や庭、道路に降った雨を集めて処理を行ない、トイレ洗浄水、庭の散水の用途に使っている。ここで、降水量、雨水の使用量、水質データなどが調査された。
ベルリンの降雨量は、東京都心の約40%にすぎない。その少ない雨を身近な水資源としてとらえ、有効活用していこうという考えが基本になっている。
屋根、庭、道路に降った雨は、雨どいやマンホールから地下2階部分にある160m3の雨水貯留槽に流れ込む。雨どいには屋根から流れてくる葉や大きなごみを取り除くネット状のフィルターが取り付けられている。
雨水貯留槽に貯まった雨は、そのあと微生物処理を行なう砂利槽を通過して6m3の貯留槽へ入る。砂利槽から貯留槽へ運ばれる途中では紫外線照射装置により、雨水は殺菌されてから貯留槽へ移ることになる。こうして最終的に貯留槽に貯まった水は、トイレ洗浄水、庭の散水に利用される。
ベルリンでは東京と同様に雨水の水質に問題がある。自動車排ガスによる大気汚染の影響で、すす状の黒い物資が雨に含まれる。
東京や海外の諸都市で見られる雨水利用は、通常、自動車排ガスや工場排煙などで汚れた雨や、ほこり、鳥の糞などで汚れた屋根からの影響を考えて、雨の降りはじめ5分間ほどの初期の雨水を下水へそのまま捨てていることが多いが、ドイツでは環境に与える影響を最小限にするため、汚れた初期の雨水をそのまま捨てるのではなく、処理を施してから捨てている。
集合住宅の敷地に植わった芝生や花壇のところどころに、植栽への水まき用の水栓がある。
ベルリン市の鉄道ターミナル駅から車で約20分ほどのところに、樹木や芝生に囲まれた4階建ての住宅が広がる一角にインターナショナル・カルチャーセンター(国際文化センター)がある。敷地内には雨水利用やごみリサイクルなどエコロジーな生活を体験できる施設が点在する。
国際文化センター内では、施設の屋根や道などに降った雨を貯めて、トイレ洗浄と庭の散水に使っている。
研修室前の花壇の地下には170m3の雨水貯留槽がある。雨水はいったんここに貯められたあと、上澄みの良質な水がくみ上げられて、花壇の中に埋め込まれたパイプから土壌中に浸透される。雨水の浄化が土壌中の微生物によって行われる仕組みである。
高価な水質浄化装置を選ばずにどこにでもいる土壌中の微生物を利用している点は、設備費や維持管理上のランニング・コストをも抑えている。
最終的に雨水は17m3の貯留槽にへ送られ、トイレ洗浄水、庭の散水に利用されている。1日あたり5m3の雨水が使われている。 |
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