随筆
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一発即効、一遍で痛みをとる治療の話
幕末動乱期、薩摩示現流という必殺の剣法が巷で知られるようになった。 それは裂帛の気合い一声、鋭く上段から振り下ろされる豪快な剣法であって、その攻 撃を受ける側は刀もろとも骨までも叩き斬られるというものであった。 このような一刀両断、一撃必殺となれば、いささか物騒であるからここは一発必中と でも言い替えるべきかもしれない。 百発百中とは名人芸というべきで、なんと心をときめかせる言葉であろうか。 たとえば、激痛が走るギックリ腰や寝違いの痛みが一発でよくなるとなれば、これはやは り治療する側から見ればなんとも魅力的である。 病症の早期の改善は多くの臨床家の目指すところであり、巷ではそうした名人芸ともいえる 術式の習得を日夜続けておられるであろうし、またそれに一段と磨きをかけておられよう。 研修時にはそうした技術の習得に躍起になった記憶があるが、なかなか簡単には身に付けられるものではない。 しかしながら一回の施術で患者の苦痛がきれいに拭い去られるということは、我々に とっては麻酔注射一本とは全く趣の異なる爽快な手応えがあるものである。 一発で除痛効果が出るというのは、もちろん鍼灸治療や各種の手技治療にもある。 私自身も自分の苦痛を一発で短時間に治してもらい感激した経験がある。 とにかく、患者にとってただの一回の施術で痛みの苦痛から解放されることは実にあ りがたいことである。 今回はその痛みの一発改善の話しを題材にして書いてみることにした。 従来そうした治療の補助的手段として、我々の業界でも次々と新しい物理療法機器が 導入されてきたわけであるが、ここにきて随分と様相が変わってきたように思う。 学生の時、電気・光線治療のいわゆる物理療法の効果といえば次のように講義されたものである。 1、血行循環を改善する。 2、代謝を促進改善する。 3、神経の興奮を和らげる。(鎮痛鎮痙効果) 4、神経機能を刺激促進する。 5、細菌の働きを抑える。・・・etc そして最後の項に、「心理的効果がある」というのが上げられて、さもこれが最も重 要であるかのように解説してもらったのを記憶している。 「へへえ、電気治療とはその程度のものか」という認識は、私自身その後もずっと続 いていたわけで、事実その後も効能書きどおりにはいかないのが通例であった。 ところが最近の治療機器の中には目を見張るほどの除痛効果の出るのがあるわけで、 我々の業界や医療機関にも人気があって、それこそうかうかとしておられないという事態が出てきたというわけである。 それらの機器はどのようなシステムになっているのか改めて調べてみたことがあった。
本体には専用のコンピューターが搭載されていて、常に通電状態をモニターして情報
をフィードバックしているということがわかった。「モニターしている」ということは、従来の周波数固定の通電ではないということで ある。 コンピューター自体はプログラム上で設定されている範囲以外の処理は行わない。 通常は前もっていくつかの入力パターンが設定されていて、そこに各数値情報を割り振り、当てはめてい く処理を高速度で処理するということになる。 当然コンピューターに入ってくる情報は想定内の範囲に限られた数値情報であって、それぞれにきっちりと幅がもたせて あるから自動的に該当するプログラムに振り分けらると同時に出力パターンが瞬時に決定されるということになる。 そうした膨大な情報を整理してパターン設定するという手法は、それこそ古典的治療が得意と するところである。 これは一つの重要なヒントである。例えば東洋医学の古典の『神農本草経』に登場する薬物は三六五、『素問』調経論篇にいう人体の経穴(節)も三六五と、あっさりとこの数字は出てくる。 古典では情報そのものが明らかに集約整理されている。 このことは逆に古典的手法が現代にも十分応用できる部分があるということでもある。 次に実際の通電方法であるが、これには最新の細胞レベルの電気生理学理論のエッセンスが取り入れられている。 だが、ここでふと気付いたのであるが、これはあの東洋医学の古典的治療理論とどこかスタンスが似ているではないかと。 早速、関連資料を引っぱり出して読み直してみると、ますますその感を強くした。 生体の痛みをどう捉えるか、それにどのように対応するかの理屈である。 理屈の次は実際に試してみる。手元にある電気治療器なら必要な低周波設定も自在に対応で きる。 通常のパルス波もボルター交換波も一応揃っている。これでやってみるしかない。 ただ、最新の除痛装置に搭載されているコンピューターの計算処理速度にはとてもかなわな いから、実際の通電時のパターン設定にはそれなりの工夫がいる。 ここは古典的パターン処理を最大限活用するしかないと確信する。 さらにこれを細かく短時間にモニターしながら通電すれば、いままでとは全く違った通電効果は期待できるのではないかと考えた。
シンプルな方法がベストという確信のもとに試行錯誤の結果はまずまずであったとい
うところである。そこで、やった、効いた形式で最近の症例を参考までに紹介したい。 それぞれの症例で設定した通電ポイントは、古典的経絡でいうところの手足の特定の経穴を使用した。 ●症例報告 その1 症例1 富松○○ 五十八歳女 一九九五年六月十九日 症状・一ヵ月前より左肩より上肢にかけて疼痛が持続的にあって、しかも夜間痛がひどく安眠できない。 十一日間治療を受けたが経過思わしくなく、睡眠不足で心身ともに憔悴気味ということであった。 処置・左外関と右臨泣のポイントに5分間経皮通電。 経過・翌日痛みまったくなく熟睡できたとの喜びの連絡あり。一回で治癒。 症例2 入江○○ 症例3 古賀○○ 症例4 松岡○○ 症例5 上野○○ 症例6 空閑○○ 症例7 村上○○ 症例8 石川○○ 症例9 大坪○○ 症例10 黒岩○○ |