審美歯科治療

 昔から明眸皓歯(めいぼうこうし、美しい目と白い歯)は美人の代名詞でした。歯科治療はおいしく物が食べられる様にする事がひとつのゴールではありますが、さらに一歩進んで、より美しく自然な口元を回復したいという欲求に応えるのが審美歯科治療です。本来、歯科治療はすべて審美歯科治療であるべきですが、我が国の保険制度では審美歯科治療は美容目的とされ、ほとんどの治療が保険外治療となります。

 審美歯科治療には、歯並びを改善する歯列矯正、歯を白く漂白するホワイトニング、保険治療では達成できない自然な歯を作る補綴修復治療、歯肉のラインや色を改善する歯周形成外科などがあります。



補綴修復治療

 歯列矯正やホワイトニングは、自分の歯を綺麗に並べたり白くしたりする治療で、これだけで終われば理想的と言えます。これに対して、これから説明する補綴修復治療は、自分の歯にセラミックの歯を被せたりする治療で、大抵は歯を削らなければなりません。

 ホワイトニングでは綺麗にできない歯や、虫歯の治療として行う場合は補綴修復治療を行う事になります。

 保険治療でも前歯は白くできますが、より美しく自然の歯と見分けの付かない歯を入れたい時や、より耐久性のある治療をしたい時は保険ではできません。また、奥歯に白い歯を被せたい時も保険ではできません。


ダイレクトベニア

 この症例は歯に縞模様が見られ、全体に透明感が無く特有の色を呈しいます。これは、幼児期ににテトラサイクリンという抗生物質を使用した副作用による物で、昭和40年代生まれの人に多く見られます。ホワトニングでは綺麗にできない典型的な症例です。

 このような場合、通常はポーセレンラミネートベニアという方法で治療します。これは、歯の表面を少しだけ削って、下の写真のような、ちょうど付け爪のようなセラミックの薄いシェルを張る付ける方法です。前歯だけにすべて行うと、全部で12本のセラミックの歯を使用するので、かなり高額な治療となりますが、仕上がりはとても自然な物となります。

 これに代わる次善の治療法として、ダイレクトベニアという方法があります。これは、歯の表面に高品質の樹脂を直接盛りつけていく方法で、ポーセレンラミネートベニアほどの美しさや耐久性は得られませんが、治療費は5分の1以下で済みます。

 上の写真は、まず上の前歯6本をダイレクトベニアにて修復した所です。歯は全く削っていません。少し歯を削ると、さらに白く自然に仕上がります。

 ダイレクトベニアの症例をもう一つお見せしましょう。下の写真は中学3年生の女の子の歯です。上の前歯に白班があります。実際は、写真よりもかなり目立っています。これは、エナメル質形成不全と言って、体の中で歯のエナメル質が作られる時に、何らかの原因でうまく作られなかった為に起こります。上の前歯4本を、表面をほんの少しだけ削ってダイレクトベニアで修復しました。治療後は、人前で口を開けて笑えるようになったと喜んでいただけました。ダイレクトベニアでは、歯を削る量はエナメル質の範囲内で、しかもほんのわずかな量ですので、歯が弱くなる心配はほとんどありません。歯を全く削らない事もあります。



セラミッククラウン

 審美歯科治療で最もポピュラーな方法は、歯を削ってセラミックの歯を被せる方法です。全く同じ白さでも、紙の白さ、プラスチックの白さ、陶器の白さはすべて違って見えますね。現在、歯の白さを最も表現豊かに再現できるのはセラミックです。そして、セラミックの色は永久的に変わりません。そのため、審美歯科治療では、セラミックによる修復が中心となります。

 従来から、セラミックは脆いので単独では欠けやすいという欠点がありました。そこで、内側に芯として金属を使用し、それにセラミックを焼き付けて強度を確保したメタルボンドが広く普及しています。

 それに対して、すべてセラミックでできた物はオールセラミックと呼ばれ、中に金属が入っていないので、光の透過性に優れ、メタルボンドよりも美しい歯が作れます。また、オールセラミックは金属を使用していない為に、金属アレルギーの心配もありません。このように審美歯科の観点からは非常にすぐれたオールセラミックですが、脆くて割れやすい性質の為に、適応症が限られていました。

 これらの長所を併せ持つのが、最近登場した次世代のオールセラミック、「ジルコニアボンド」です。これは、上述のメタルボンドのメタルの代わりに、人工ダイヤモンドにも使われるジルコニアを使った物です。これは、美しさと強度を兼ね備えた優れたオールセラミックで、今後セラミック修復の主役となっていくでしょう。

上の写真は左右とも左から順に、従来のオールセラミック、ジルコニアボンド、メタルボンドです。外から見るとほとんど変わりませんが、光の透過性が違うので、実際に削った歯に装着した時は透明感にかなりの差があります。

 セラミック修復治療は、真ん中の歯を1本だけ修復するのが最も難しい治療です。もう1本の真ん中の歯とほんの少しでも違っていると、すぐに判るからです。このような困難な条件での3種類のセラミック治療を比較してみましょう。


メタルボンド
矢印の2本の歯がメタルボンドで、他は天然歯です。このように、自分の歯に透明感が無い場合は、メタルボンドでも十分に再現できます。この写真は当院で装着後10年以上経過していますが、セラミックはこのように、何年経過しても変化しないのが特長です。

オールセラミック
矢印の歯がオールセラミックで、他は天然歯です。オールセラミックではこのように透明感のある歯でも容易に再現できます。ただし、脆いと言う欠点があります。

ジルコニアボンド
矢印の歯がジルコニアボンドで、他は天然歯です。ジルコニアボンドはこのように透明感のある歯でも再現できます。強度もメタルボンドと変わりません。