タイトル

今日も元気

出題者

Yuko.N

白い猫

森の中に住むおばあさん

手袋

お花畑

大きな虹

ゆうこちゃんは一人っ子、大きなお目目がくりくりしている、かけっこが得意な元気な女の子です。1月の雪のふる日に産まれたのでちっちゃい時から、ゆっきーと呼ばれています。

小学校まで1時間もかかる山のふもとに家族3人で住んでいます。
お父さんは木を切って炭を作る仕事をしています。
生まれた時から、ずっと住んでいるので山の動物たちも皆友達です。
ゆっきーは学校が大好きで毎朝早起きして、元気に学校に出発です。
「おっはよう」、学校へ行く途中に出会うお友達にも、おじさんにもおばさんにもついでに、犬や猫にもみんな声をかけるんです。皆、ゆっきーがやってくるのを楽しみに待っています。

「おばあちゃん、おっはよう」
ゆっきーが最初に声をかけるのは、村外れの
森の中に住むおばあさん
「ゆっきーかい、ちょっとお待ち」
いつもは家の中から手をふって「行っておいで」というだけのおばあさんが、今日は元気に外に出てきました。
「おばあちゃん、今日は元気だね」ゆっきーが言うと
「ゆっきーが毎日、声をかけてくれるのでおばあちゃんも元気が出てきたよ。ごほうびだ、持っていきな」おばあさんが、
手袋を渡してくれました。
真っ赤な毛糸の手袋、おおきな字で「ゆうこ」とししゅうがしてあります。
「ありがとう、おばあちゃん」片方なくさないように、両方の手袋が真っ赤な糸で結んで有りました。

もう一回大きな声で「ありがとう、おばあちゃん」と言ってからゆっきーはかけだしました。
早く学校に行って、皆に自慢したかったんです。
こんなにきれいな手袋、だれも持ってないもんね。
両手を広げて「ぶーん」なんて声を出して走ってみるとまるで飛行機のようで、ますますスピードが出そうです。ほっぺたにあたる風は昨夜降った雪で、いつもよりもっと
冷たくて、ゆっきーのほっぺは真っ赤なりんごのようです。

学校がどんどん近づいてきました。
昔から子供達が通るのを見守ってきた、いちょうの木が見えてきました。
あの木の角を曲がるともう学校です。
「ぶーん。おっとっと、行きすぎちゃうぞ。」
ゆっきーは急ブレーキをかけました。
いちょうの木の根元は雪がないんですが、雪のように
白い猫がいるように見えました。
「おっはよー」声をかけてから、それが猫ではなくて山にすんでいるウサギの「ごん」だと分りました。冬になると野ウサギは真っ白い毛になるんです。
「どうしたの、ごん」声をかけて、ごんが猫に見えたわけが分りました。耳を小さく折りたたんで、首をまげて元気なく横たわっていたんです。

体を触ってみると、随分冷たくなっています。
山にえさがなくて、村まで降りて来たんでしょう。
歩く元気が無くなったようです。
「ごんが大変だ」ゆっきーはお母さんが作ってくれた、
あたたかいジャンパーを脱いで、ごんをくるみました。
「私は手袋があるから大丈夫」そう言って、ごんを抱いて学校まで行きました。
「どうしたんだい、ゆうこちゃん」用務員のおじさんが薪ストーブに赤々と
火をたいて、皆が寒くないようにして待っていてくれました。
「ごんが冷たくなってるの、大丈夫かな?」
「どれどれ」おじさんはごんの目を見たり、おなかをさわったりしてましたが
「大丈夫。ちょっとお腹が空いているだけだよ」
おじさんはそう言って、ストーブの横にごんの席を作ってくれました。
「どれどれ、にんじんでも持ってきてやるか」
おじさんはそう言って、給食室のほうに行ってしまいました。

それから、暫くはおおさわぎ。
やってきた子供達、みんなに名前を教えたり、どこから連れてきたか教えたり
ゆっきーはもう疲れてしまいました。
にんじんを貰ったごんはおおいばり、教室の中を鼻をふむふむさせながら
においを嗅いでまわっています。
「大変だ、ごんが電気のコードをかじっちゃった」
ごんは澄まして、まさし君の机に飛び乗りました。
飛び降りる事は出来ないらしく、まさしくんのノーとをかじっています。
「ごん、こっちに来なさい」
慌ててゆっきーは自分の机にごんを連れてきました。
大きな目とくりくりの目が出会うと、ごんが照れたように下を向きました。
「皆、静かにしなさい」先生の声でやっと授業がはじまりました。

「今日はごんのおかげで大変だったよ」
家に向かいながらゆっきーはごんに話しかけました。
ごんは関係無いね、なんて感じで、あっちをふむふむこっちをふむふむ。
それでも一緒に山に向かってついてきます。

この雪がとけた頃には春がやってきます。
田んぼに植えられたれんげの花が雪の中で、少しずつ赤い花をつけ始めています。
もう少ししたら、このあたりの田んぼは一面
お花畑になるんです。
れんげの花がたくさん咲いたら、大きな花飾りを作ってお母さんに持って帰ろう。
おかあさんの喜ぶ顔が浮かんで、ゆっきーも笑顔になりました。

「ごん、今度学校に来る時は一緒にリスさんも連れてこようね」
ごんは関係ないねって感じで、鼻をひくひくさせていましたがふっと立ちあがりました。
太陽が西の空で大きく輝いて、風に吹かれて舞いあがった粉雪にきらきら当たって、
夕立の後の虹のように、空一面が虹色に輝いて見えました。

「わー、きれい。お母さんにも見せなくっちゃ」ゆっきーはごんにそう言うと、一生懸命かけだしました。赤い手袋に真っ赤なほっぺ、元気にえいほ、えいほとかけて行きます。
ごんも、ぴょんぴょん跳ねながら一緒に走ってついて来ます。
西日に照らされて、山一面の雪が
大きな虹のように輝いていました。

「お母さ〜〜ん」ゆっきーの声が山にこだましました。