タイトル

雨の日のできごと

出題者

Yuriko.T

水仙

不眠

白いシャツ

雨のひとしずく


わしは、森の主のふくろうじゃ。神社の森で一番大きなイチョウの木に住んでいる。
この辺も、住宅が次々建って子供達の声が一日中聞こえている。
さすがに夜は大分、静かになるが近くに大きな道路が出来て一晩中、車がひっきりなしに通っている。ふくろうは夜には強いんじゃが、わしでもさすがに
不眠症になりそうじゃ。
こんな事なら、道路が出来る時引っ越して行った狸のじいちゃん達と一緒に山に移れば良かった。元気で暮らしておるかの〜。


ただこの神社には大きな池があって、えさもまだ沢山おる。仕方がないから、もう少し辛抱するしかないようじゃな。春が近づいてくると、岸辺には
水仙がいっぱい咲いて、それはそれはきれいじゃ。町の人達も、たくさんやってくる。それがちょっとうるさいが、わしも岸辺の木にとまって、のんびり水面に揺れる水仙をながめるんじゃ。人がたくさん来るくらいは、我慢しないとな。

今日はちょっとしたハプニングが有って、大騒ぎじゃった。
池のほとりで、野点が開かれたんじゃ。着物をきた女性がたくさんやってきて大きな傘の下で、お茶をふるまっていた。子供達もいつもより、静かで真面目な顔をして順番を待っていた。
わしなんか、池の水を飲めば十分なんじゃが、なんであんなもんが美味いのかな?
でも皆、静かに待っておった。近くでは
の演奏も有って、一段と優雅な雰囲気になってな、
その時は演奏の音しか聞こえないくらいじゃった。

その時じゃ、空が急に暗くなって、風も吹き出したんじゃ。そして、空から雨がざーーっと降り出した。差してあった大きな傘が空に舞って、あっという間に池まで飛んで行ってしもうた。
着物の女性達もきゃーっと大騒ぎじゃ。さっきまであんなに上品だったんじゃがな。
わしなんか、自慢じゃないが夕べから急に暖かくなったんで、天気が変るぞと森の皆に言っとった。おかげで、森の動物たちは、みな準備をしとって
雨のひとしずくもあびちゃおらん。
雨好きのカラスのかん太郎は、一雨浴びて来るなんて言っとったがな。

その時じゃ、「子供が池に落ちたぞ」という声が聞こえた。
池のほうを見ると、白い帽子が浮かんでおった。こりゃ、大変じゃ。その時、騒いでいる人達の中から、一人の青年が池に飛び込んだ。まだ寒いんじゃがの。
すぐに、子供のとこまで泳いで行った青年は子供を抱えて上がってきた。
きておった
白いシャツは、泥で茶いろっぽくなっておったが、りりしかったの。
わしが、人間の娘なら1度に恋してしまうじゃろ。人工呼吸を少しやっただけで、子供はすぐに息を吹き返して「わー」と泣き出した。もう大丈夫じゃ。
お母さんらしい女性が、一生懸命頭をさげておった。


良かったわい。
年だけとったが、わしじゃどうしようもない。
みなが、優しい心を持って暮らとるこの町にわしも、もう少し暮らしていようと思ったわい。