タイトル

優しい心

出題者

Reiko.K

ハンコ

フラメンコ

湖の底

星の王子様


典子ちゃんは小学校6年生だよ。お父さん、お母さんとお姉さんの4人家族です。
お父さんは学校の先生、時々学校で会うんだけど、知らん顔をしている。
典子ちゃんはお父さんがとっても大好き。「頑張ってるかい?」なんて聞いて欲しいんだけどね。
「本当はお父さんは典子が大好きなんだよ。でも、照れ屋だからね」お母さんは何時も言う。
お母さんは薬局でお薬を作っている。だから元気という訳じゃないと思うけど、何時も元気一杯、朝早く私とお父さんのお弁当を作ってくれる。それから薬局に出かけて夜遅くまで帰ってこない。
だから、夜のお食事は私もお手伝いして作ってあげるんだ。
お姉さんは去年から東京の大学生、最近はあまり家に帰ってこないんだ。
お父さんもお母さんも、何も言わないけどたまには電話ぐらいしたら〜お姉ちゃん。

学校から帰って、お母さんの作ってくれたおやつを食べてたら「キンコーン」チャイムが鳴った。
「知らない人かもしれないから、居ないふりをしてなさい」お母さんの言い付けを守って、じっとしてた。「誰もいないのかな?宅急便ですよ。」

あ、あの優しいお兄ちゃんの声だ。
この前、横断歩道で車が止まってくれなくて困っていた時、にっこり笑顔で
「早く、渡りなさい。気をつけて」って言ってくれたお兄ちゃんの声でした。
それから、道路で会う度に「元気かい?気をつけて帰るんだよ」と声をかけてくれるんです。

「お兄ちゃん。」典子はドアを勢い良くあけました。
「なんだ、ここはお嬢ちゃんの家だったの?」
「典子って言うんだよ」ちょっとはにかみながら言いました。
「偉いね。お留守番なんだ。
ハンコがあるかな?」お兄ちゃんが聞きました。
私は受け取った荷物を持って部屋に駆け込みました。
だって、お姉ちゃんから私宛の荷物だったんです。うれしいな。

「典子、元気?お姉ちゃんも元気だよ」
入っていた手紙からお姉ちゃんの声が聞こえてくるようです。
手紙と一緒に写真と人形が入っていました。
写真にはきれいなドレスを着たお姉ちゃん、人形は腰に片手をあて、もう一方の手を頭の上にかざしています。なんとなく、お姉ちゃんの写真に似ています。
どれどれ、手紙をもう少し読んでみましょう。
「お姉ちゃんは大学で
フラメンコ同好会に入りました。
練習が忙しくって、休みが取れないの。この前、学園祭で踊った時の写真が入れてあります。
そのうち、お人形のようにスマートになって、フラメンコも上手くなるからね」

お姉ちゃんはすごいな。フラメンコなんて、このへんじゃ誰も踊れない。
典子ちゃんはうれしくなって、写真と同じ格好をしてみました。
急にフラメンコが踊れるような気がして「ラララ」と踊っているとのんきな顔をして、
飼い
のミーがやってきました。「ミー、私のフラメンコを見て。どう格好良い?」
そういって写真の格好で足をどんどん鳴らしました。
ミーはふん!て顔をして行ってしまいました。
「もうミーったら」典子ちゃんはミーを追いかけだしました。
素直でないミーなんか、どっかに行っちゃえば良いわ。
こりゃ、大変という感じでミーがどんどん逃げて行きます。

さっきドアを閉め忘れたようです。ミーはお外に飛び出しました。
キャー大変。典子ちゃんも慌てて外に飛び出しました。
家の近くに大きな湖があるんです。岸辺は浅いけど、石を投げても湖の底星の王子様。


「どうしたの、典子ちゃん?」
「ミーが逃げちゃった。湖のほうに行っちゃったの」
「ここで待ってなさい。僕が探してあげる」

しばらく経ちました。典子ちゃんは涙が止まりません。
その時、「この猫かい?」お兄さんが優しい顔で猫を典子ちゃんの前に現れました。
「わー、ミーだ」典子ちゃんはミーに抱きつきました。

「本当に大切なものは目に見えないんだよ」
「貴女が可愛がる心を持てば、猫にも気持ちが伝わるんだよ。 仲良くしてあげなさい」
お兄さんはそう言って、車に乗りこみました。
この前読んだ
星の王子様のお気に入りの文章です。
宅急便の車が走り去った後に王子様のマフラーがひらっと舞ったような気がしました。
あのお兄さんは星の王子様だったのかな?典子ちゃんは、そう思いました。

「大変、大変。ドアを開けたままだった」ミーを抱いて典子ちゃんは駆け出しました。