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【うつ病】
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うつ病とはどのような病気?
気分の障害を主症状とする疾患の総称を「気分障害」と呼びます。この「気分障害」は伝統的に「躁うつ病」と呼ばれています。そううつ病とは、そう状態とうつ状態の2つの局面(双極性)が認められる場合にのみ用いられる診断名であり、それぞれにそう状態或いはうつ状態のみが著しい場合を躁病又はうつ病(単極性)と言います。臨床場面では単極性の場合が多いので、ここでは主に「うつ病」について説明します。
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うつ病は、ストレスにさらされれば、誰にでも起きる可能性がある病気で「心の風邪ひき」のようなもので、女性では4〜5人に一人、男性ではその半分程度の人が、一生のうち一度はうつ病になるといわれています。
悲しいことがあったり、大きな失敗をしたときなどは、誰でも食欲がなくなったり眠れなくなりますが、うつ病はこれが悪化し、自然回復しないままに遷延している状態と言ってよいでしょう。
どのくらいひどければ病気と呼ぶのかは、診断基準である程度決められていますが、本格的なうつ病の状態は、その症状により、日常生活を送るのが困難になります。
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(「看護のための最新医学講座第12巻精神疾患」日野原重明・井村裕夫監修、中山出版より抜粋)
1.メカニズムと有病率
うつ病のはっきりとした原因は明らかではありませんが、遺伝的要因(発病しやすい遺伝素質)、生理的(神経科学的)要因※、そして生育歴(ライフイベント)や人格(まじめ、くよくよと悩みやすいなど)、家族を含めた対人関係などに由来する心理社会的な側面(ストレス状況や身体状況の変化など)など、いくつかの要素が組み合わさって発症すると考えられています。
強い持続的なストレスにさらされると、誰でもうつ病になりうると考えられますが、ストレスに対する弱さには個人差があり、特に生まれ育った環境の影響を受けることは間違いありません。幼い頃に両親を亡くすなどの喪失体験、虐待を受けた体験などにより、セロトニン神経の発達が悪くなり、うつ病になりやすくなるのではないかと考えられています。
※
生理的(神経科学的)要因に、「セロトニン仮説」があります。脳には様々な脳内物質が働いていて、神経細 胞から神経伝達物質が放出され、他の神経細胞に情報を伝えます。うつ病では、神経伝達物質の一つであるセロトニン(睡眠や食欲、意欲や気分などをコントロールする)が不足すると考えられています。
うつ病の有病率は10〜20%と高く、ごく特別な人のみか罹る病気ではないといえます。女性が男性のおよそ2倍程度といわれています。また、好発年齢は20代後半から30代にかけてであり、特に中高年時の有病率は高いといわれています。
2.
診断
DSM-IV(精神障害の診断と統計の手引き)によるうつ病(大うつ病エピソード)の診断基準の一部を以下に示します。
以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている;これらの症状のうち少なくとも一つは、^抑うつ気分又は、_興味または喜びの喪失を示す。
(1)
患者自身の言明(例えば、悲しみまたは、空虚感を感じる)か、他者の観察に
よって示される抑うつ気分
(2)
すべての活動における興味、喜びの著しい減退。
(3)
著しい体重減少、あるいは体重増加(例えば、1ヶ月で体重の5%以上の変化)。
(4) 不眠または睡眠過多。
(5)
神経運動性の焦燥または静止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着き
がないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)。
(6) 疲れやすい、気力の減退。
(7)
価値がないと感じる、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であること
もある)(単に自分をとがめたり、病気になったことに対する罪の意識ではない)
(8)
思考力や集中力の減退、または、決断困難。
(9)
死についての反復思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが反復的
な自殺念慮、自殺企図または自殺するためのはっきりとした計画。
3.
うつ病になりやすい人
うつ病は、一見「怠けている」ように見えるかもしれませんが、実は、以下のような素因を持つ人がストレスにさらされ、発症に関係する状況に置かれると、発症しやすいと言われています。
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まじめで責任感が強い
● 仕事熱心
● 完全主義で几帳面
● 仕事や家事を人任せにできない
● 融通がきかない(思考が柔軟性に乏しい)
● 人にどう見られているか非常に気になる
4.
症状
1)
身体症状
1.
寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝早く目が覚める、熟睡感がない
2.
夢ばかり見る、疲れているのに目が冴えている
3. 頭が思い、頭痛、めまい、ふらつき、
4. 体がだるい、疲れやすい
5. 胃部不快感、食欲不振、体重減少
6. 便秘、口が渇く
7. 肩こり、背中や腰などからだの痛み
8. 息苦しい、動悸がする
9. 手足の痺れ感、嫌な汗や寝汗をかく
10. 排尿困難、性欲低下、生理不順(女性)
2)
精神症状
1.
憂鬱でひどく落ち込んだ気分となる、寂しい、悲しい
2. 頭の動きが鈍くなる
3.
不安が強く、焦ったり、落ち着かず、涙を流したりする。
4.
仕事や家事など、何かをしようという意欲が湧かなくなる
5.
今まで興味を持っていたことにも興味がなくなり、楽しくなくなる。
6.
物事全てを悲観的、絶望的に捉えるようになる。
7. 迷ってしまい中々決断ができない
8. 子どものように人に頼る
9.
自分を責めたり、「だめな人間」と強く思いこんでしまったり、その結果、「自分は
この世に必要がない」と考え自殺を考えることもある。
3)
行動の変化
1. 中々行動に移せないし、行動が遅い。
2.
自ら進んで何かをすることが少なく、一人で自室にいることが多い。
3.
口数が少なくなり、低い声でぼそぼそと、ためらいがちに話す。
5.
回復までの過程
単発のうつ状態(単一エピソード)の場合は、通常3〜8ヶ月間持続し、約20%は2年以上のうつ状態が持続すると考えられています。またごく急性期的な症状は2週間から2ヶ月で消失すると言われています。 再発率は50%であり、中でも重症例の80%に達するとの報告もあります。言うまでもなく、再発を繰り返すと寛解期が短縮されるため、次第に重症化するケースが増加します。しかし、最低6ヶ月間の抗うつ薬による持続療法を行った場合、再発率が低下すると言われており、予後に対してそれほど悲観的になる必要はないといえます。
尚、持続療法による再発予防効果は5年ほどです。更に自殺率に関しては、重症例では15%程度ですが、軽症の場合はごく稀で、自殺企図を繰り返す場合は、うつ病よりもむしろ他の疾患、例えば、人格障害などの可能性を検討してみる必要があります。
6.治療
1)
休養
うつ病になりやすい人は、責任感が強い人が多いため、仕事などを休むことをためらいますが、思い切って休み、心身の休養をとったほうが短期間で治療でき、回復を早めます。
2)薬物療法
うつ病の治療には、抗うつ薬を内服します。軽症から中等症の場合は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が良く使われます。
重症の場合は、三環形抗うつ薬が使われます。副作用(口渇、尿閉、眼調節障害など)が強いのですが、使用しないと治り難いというジレンマがあります。
服薬に関する注意点は以下のとおりです。
1.
服薬の効果が現れるまでに1〜2週間ほどかかりますので、「良くならない」と思っ
て勝手に薬を中断しないようにしましょう。
2.
病院で処方された薬は、指示された量・回数をきちんと守って飲みましょう。
3.
症状がなくなっても服薬を続ける必要があります。良くなったからと思い、自己判
断で中止しないようにしましょう。
4)精神療法
まず病気であることを説明し、休養させ、必ず治る事を保証し、決して励まさない。治るまでは退学、辞職など重大な決定をしないように指導する。
認知療法:同じ状況でも、その状況をどのように捉えるかによって、気分が変わってきます。その捉え方を「認知」と言います。うつ病にかかりやすい人は、物事を悲観的に捉える傾向にあるので、それを現実的なものに修正し、問題解決を助けることでうつ病を治療します。
7.周囲の対応
身近な人がうつ病になったら、周りの人は気長に回復を待ち、以下のような対応をしてください。
1) 励まさない:焦りや不安がありますが、期待に応えようとして、疲労しきった心と
体に鞭打って負担になるので、逆効果です。→本人の苦しみを理解し、休養をす
すめる
2) 気晴らしに誘わない:人と一緒にいると苦痛に感じたり、食事や旅行に誘うと帰
って悪化させたりすることもあります。
3)
判断・決断を先送りにする:考えがまとまらないので、大事な判断や決断ができ
ません。その時にではなく、退学や辞職など大事な決断は、病気が良くなってから
行うようにすすめましょう。
4) 受診をすすめる:本人の気力だけでは治らないことを理解し、治療をすれば必ず
治る事を説明し、受診をすすめましょう。
5) 自殺に注意する:「死にたい」等の発言があれば、深刻さがないように見えても、
受け流したりせずに、その後の言動に注意し、医師に相談してください。
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