松田信幸建築研究所  一級建築士事務所 Works Home
■建築費を追う 2

建築費を追う 1


建築費が決まるまでのプロセス

(日南の家
建築費を抑える一例としてローコストの手法が建築専門誌面に掲載されております。ここではその前提問題に触れてみたいと思います。設計内容が実際にローコストを求めた仕様になってはいても工事見積り書にその内容が正しく反映されているのかといった事です。見積り書を精査するとそうではない場合があったりするからです。ローコスト仕様に限りません。一般仕様においても然りです。契約の前に見積り内容を吟味することはとても大切なことです。建設会社が作成した見積り書に対してそれを評価できる味方がいると心強いですね。

日南の家の建築費が決まるまでのプロセスを通してその価格の違い、そしてその理由を記すことで何らかの手立てが見えてくるのではと思います。
先ずは設計した内容が設計予算でどのくらいになるかを見てみることから始めます。
■設計見積り書:総額13,433,000円(消費税抜き
全体工事費 建築工事内訳
共通仮設工事 70,000
建築工事 8,833,314
住宅設備機器工事 1,072,640
給排水衛生工事 526,043
空調換気工事 102,000
電気工事 503,363
照明器具 85,000
外構工事 1,122,078
諸経費 1,231,444
工事費合計 13,433,000円
仮設工事 228,470
土工事・基礎工事 770,060
木工事 2,902,015
屋根・樋工事 1,217,960
左官工事 148,090
鋼製建具工事 495,000
木製建具工事 905,000
塗装工事 193,362
内外装工事 1,454,157
雑工事 519,200
■日南の家の設計概要
構造:木造2階建て、在来工法(柱120mm角)
基礎:コンクリートべた基礎t=150mm、鉄筋D13@250
床面積:住宅本体105u、カーポート15u
外壁:ガルバリウムGL鋼板スパンドレル張り・一部ジョリパッド塗り
室内床:飫肥杉無垢板t=30mm張り
室内壁及び天井:オガファーザー貼り及びビニルクロス貼り
クライアントの意向により、競争見積もりではなく、一社に見積り依頼しすることになりました。
  • 上記表は実施設計に基づいて作成した設計見積り書
  • ローカル市場ベースを参考に算出した。
  • これを基準と考え、建設会社へ見積もりを依頼
  • 目標は12,500,000ですが設計内容は変えないとのクライアントの意思を尊重。
■評判を基に建設会社A社を選定し、見積もりを依頼した。

結果は19,634,000円
(消費税抜き)。

我々の予想の範囲を遥かに超えたもので大変驚いてしまいました。というのも調査によるとA社は比較的に受注件数もあり、施主とA社との間に仲介者も立てるということで他社より努力してくれるのではないかと期待をしていたからです。工事費項目の個々について細かく議論する以前の提示額なので結論として、その後の協議は断念しました。
上記のような見積書が出てきたその本当の理由は推測するしかないのですが下記のようなことではないかと思います。
  • 各専門業者の見積もり内容が希望価格で提出されており、それらを集計する元請け会社で調整されていない。
  • 各専門業者の見積もり額はある程度、抑制されているが元請け側の経費が必要以上に含まれている。
  • 最初は所謂、どんぶり勘定で多めに見ておいて、最後の〆で辻褄を合せようとしているのではないか。
  • 会社では注意しているつもりが見積もり担当者任せで会社方針が反映されてない。
見積もり書の作成現場で書類の体裁がオートマチックに整った段階で作業が終ってしまい、それ以上の努力をしてくれていないのではないかと思わせる提示で残念でした。私たちは積算に際して、設計内容を充分に吟味してもらった上で、或る程度の提示額を期待しておりましたがその額に開きがあり過ぎました。
■次に積算依頼をB社に替えました。

第1回目 請負見積りの結果は:15,544,536円
(消費税抜き)

一般的に建設会社の最初の見積りに記載されている数値は当然の如く希望が反映されます。しかしこちらにも希望額があります。今回の回答は充分に議論の余地があるものと感じました。内容評価としては次の工事費が設計見積りと大きく違うところでした。
  • 基礎工事    (日南市は近郊市町と較べてコンクリートが高いと言われています。)
  • 木工事      (プレカットではなく手刻みになっている)
  • サッシ工事   (代理店によって較差がある)
  • 木製建具工事 (建具屋さんの生産体制によっても較差が生じる)
  • 内外装工事(各建築材料費) (代理店との取引関係によって値引率の較差がある)
  • 螺旋階段製作費  (鉄骨加工場によって異なる)
上記の工事項目にそれぞれ注釈を付けると共に他の専門業者への再見積りを含めて全体的な数値をふるいに掛けなおしてもらうことをB社に依頼しました。(希望価格をもう少し努力してもらえませんかという意味です。)
■第2回目 B社見積り:15,000,000円(消費税抜き)
あまり積極的に見直してもらってはいないなという印象でした。そこで見積書の内容を工事項目とその数量及び単価に至るまで、全て設計サイドでチェックを行いました。その結果を表にまとめ、その一部を下に掲載します。

工事項目 単位 数量 単価 工事費 備考
一般木材 m3 8.428 44,500 375,046
チェック m3 7.187 42,000 301,846 -73,200
檜造作材 m3 0.518 480,000 248,640
チェック m3 0.343 480,000 164,640 -84,000
アガチス造作材 m3 0.507 200,000 101,400
チェック m3 0.682 200,000 136,400 35,000
建て方クレーン 1 40,000 40,000
チェック 1 30,000 30,000 -10,000
  • チェック後の指摘事項を集計すると全部で135万円相当の減額となります。
  • 上記とは別に一部の工事を分離させることにより,75万円相当の減額ができる方法も考えました。但し設計変更による減額はこの段階ではまだ考えておりません。
  • 金属製作物に関してB社とは別に施主の知り合いの工場へ見積もり依頼して比較的に低価格でできることがわかった。
■第3回目 請負見積り:12,500,000円(消費税抜き)

この見積もりには一部について別途工事が含まれていますのでそれを加味すると
総額13,425,000円
となります。
  • 基礎工事、木工事、サッシ工事については設計で決めたゴールに到達しました。
  • 総額135万円のチェックに対して100万円相当の減額が反映されています。
  • 恐らくB社もある程度の努力を強いられたと思いますが契約は双方に掛かることですので両者の利益のバランスが取れていることが重要です。
  • 専門業者及び元請け会社の協力体制があって初めて金額は研ぎ澄まされて参ります。また度を過ぎないことも建物の品質を守る上で重要なことです。
見積書は一部の工事を除いてその内容に対して適性に反映されてきたと評価できます。最初の見積もり提示金額と比較するとこの段階で約13%の金額が減額されました。設計変更なしです。

■設計で定めたゴールには到達出来ましたが目標額12,500,000円が最終ハードルです

このハードルをクリアーする方法は下記の2点ではないかと思います。
  • 未だゴールに達していない工事を分離発注にする。
  • 設計の内容を変更する。
注) 設計変更による減額方法は施主がその内容を承諾していただければ問題ありませんが一方の分離発注方式は後日、トラブルが発生した時に責任分担上の問題になることがありますのでその理解が求められます。

ここで更なる減額への対応策として採用しましたのは設計変更です。それを下記しますと
  • カーポートの中止
  • 外部物置の中止及びそれに伴う建具の中止
  • 床フローリング杉無垢30mmを15mmに変更
  • 木材見積もりに誤謬が発覚したのでそれを是正:グリーン材を乾燥材に戻す(18万円相当の増額)
  • 木材の刻みをプレカットにしてもらう。
以上の変更内容を盛り込み、結果として総額13,100,000円となりました。

結び
  • 我々設計者は品質と代価及びその価値判断への説明を行いますが最終的にはお施主様がお決めになることです。そのような意味から今回は施主自ら問題に全面的に対応されて、設計者がそれをサポートしたり、アドバイスしたりすることができました。お施主様にとっては自らの体験を通して結果内容を充分にご理解されたのではないかと思います。
  • これから工事が着手され、具体的に決めていかなければならない点が沢山残っております。施主及び設計者が一丸となって最後に喜んでいただけるような住宅造りの後半のフェイズをしっかりとやっていきたいと思います。竣工は夏です。いっしょに旨いビールを飲めることを楽しみにしています。
Works Home Topに戻る