| 松田信幸建築研究所 一級建築士事務所 |
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■建築費を追う 1
■建築費を追う 2
工事費一千万円までの攻防
波島の家(宮崎市)
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背景
設計依頼を受ける以前の背景からお話します。私に相談がある前に施主とA及びB社の建設会社との交渉が既に始まっておりました。延べ床面積26坪の平面図をそれぞれの建設会社が提案し、設備費、建築費を含めて一千万円でやりましょうと承諾を得ていました。ところが施主は提案された計画案がどうしても気に入らずに当時、東京で設計活動をしていた私に良い案を考えてはくれないかと相談のメールが届きました。結果的に施主は私の案を大変気に入ってくれて設計がスタートすることになりました。
上記2社は平面図のみの提示で、その工事費を約束していたようです。例え26坪の住宅でも工事費一千万円の制約は厳しいものがあります。その価格の範囲内であれば何でも良いということではないと思います。この場合、平面図での間取りが提示されていただけで、品質を決める多くの部分を施主は知らされていなかったのではないでしょうか。 |
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競争見積方式
設計図書が出来上り、工事費積算を前述のA及びB社の建設会社を含む3社へ依頼しました。あとの一社は普段は大工さんであり、時々元請けで工事を請け負っているN氏でした。私がこの人を友人に頼んで紹介してもらったのはN氏のように諸経費が多く掛からない立場の人でないと請負経費に多くの金額が割かれて肝心の住宅の品質を落とさざる得ない事になることを恐れたからです。
見積結果(設計延べ床面積27坪)
A社:16,000,000円
B社:14,746,000円
N氏:11,356,000円 |
左記の結果でした。3社の工事費には著しい差が出ております。ここで大事なことが3点表れています。
- 私が提示した同一の図面と仕様書を受けとった各社の見積り書にこのような違いが出た。
- 以前のA,B2社の自社設計との違いは何か。
- 設計予算のこと。
1番目は会社の生産体制及び経費(利益)の掛け方の違いだろうと思います。2番目は私が提示した設計仕様は必要最小限のつもりでしたが、自社設計では更に簡易な工事を考えていたのではないか。3番目はこれら工事費の差額が生じる現実と設計報酬額を較べてみてください。 |
| 各社見積比較:主なものを抜粋 |
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A建設会社 |
B建設会社 |
N建築 |
| 仮設工事 |
582,100 |
491,720 |
343,000 |
| 基礎工事 |
705.170 |
473,900 |
570,000 |
| 木工事 |
4,579,700 |
4,318,491 |
2,976,000 |
| アルミサッシ工事 |
900,000 |
2,000,000 |
1,020,000 |
| 木製建具工事 |
654,700 |
1,089,000 |
478,000 |
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見積調整
N氏の場合でも、目標額には130数万円オーバーしています。それに加えて見積もり落ちも幾つか見受けられました。見積もり落ちは後々のトラブルの原因となりますので注意が必要です。そこで次に見直さなければならない項目として
- 見積書の工事項目の細目を全て確認する
- 見積もり落ちを指摘する
- 材料について品質と等級の確認を行う
- 代理店を介して流通される製品の取引価格を調査する
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| メーカーから代理店に卸される価格は定価からの低減率により、バラツキがあります。品物にも拠りますし、またメーカー及び代理店の取引関係にも拠ります。価格が流通経路を辿り、施工価格として提示されるのは最初の取引価格の10%増し程度が理想的であろうと私は考えます。しかし見積書の中には定価を上回っていることも知らずに記載されていることが過去の事例にありました。問題はそのようなミスのチェック体制ができているかです。 |
次にVEの具体案についてN氏と協議しました。VEとはValue Engineeringの略でここでは品質を下げないでもっと低価格で同じ効果を得ることを意味します。
VE案として今回採用したのは
- 布基礎をべた基礎にする。
- 梁、胴差し等の構造材を松から杉材に変更する。(地元では杉が安くまた好まれる)
- 小屋組みを一切なくしてしまい(以前は水平剛性確保のために構造用合板と垂木構造にしていた)火打ち梁方式にした。
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減額案として採用したもののうち、いくつかを記述します。
- 南側テラスと吹抜け部に面する大型サッシのガラスを複層から単層へ変更
- 木構造材及び造作材の木種を一部変更
- 2階トイレを中止(設計者としては反対)
- 一部の木製ドアの高さh=2350をh=2000に変更
- 内壁防湿シートの取り止め(外側は残す)
上記VE案と減額案により
最終工事費 10,256,000円となり、漸く目標額に達成できました。 |
結び
設計者としては住宅の品質、空間、快適性などの主要な要素に重大な打撃を蒙られることなく、クライアントが希望する金額に調整ができたことに満足をしております。最初の設計からここまで4ヶ月近い時間と労力を費やしました。その結果漸く、住まう事に夢見ることができる空間と品質に到達することができました。
結びとして読者の方に申し上げたいのは今回のように建築関係者の間取りを示した平面図とそれに値段がつけられた段階で住宅の重要な部分を決定し、多額の投資する事について、今一度、考えていただきたいということです。住宅は買うものではなく、自分達家族に相応しいものを創り上げることではないでしょうか。 |
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