| 現代美術とCGアートの謎と疑問に答えるQ&A もくじ | |
3 家庭で現代美術のCG版画を買ってみる |
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2005/12/29 |
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――絵を買うことは、素人には敷居が高くありませんか? 第一に価格が高い、第二に価格が不安定、そこに真贋、ホンモノかニセモノかもからみ、美術関係者だって不安です。一応オープン価格ではあっても、市場自体がオープンか、値は適正か、モノは本物かなどに公正取引委員会の監視もないので、洗濯機を買うようにはいかないでしょう。 |
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――本当に欲しい絵を見つけたなら、洗濯機の買い替えよりは簡単そうですが? 実際には美術品なんてヒョイと簡単に買えますが、自分が本当に欲しい美術品が、音楽や映画のようには決まりません。美術品のセールス・トークには、「一番人気」「○○受賞」「美大卒」「外国留学」「師は大物」「名士の推薦」「貴人が所蔵」など、付属情報がたくさん並んでいます。例えば音楽ソフトを買う前に、誰がこんな情報に気を回すでしょう。こんな飾り付けは音楽にはないし。 |
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――「値上がりしますよ」の一言に、いかにも美術らしさを感じますね? かんじんのそれがありました。美術の裏の主役は変動する価格です。株券や穀物相場のような投機も混じってきます。こうした押し寄せる付属情報にほんろうされない機微というか独立心が、つまり「美術を見る目」かも知れません。 |
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――人気画家が没すると、作品価格は大きく下がると聞きましたが、なぜそうなるのですか? 実際には関係者が維持に努め、すぐに暴落したり捨てられたりはありません。それでもいずれ時間がたつと、99パーセントは忘却のかなたへ向かいます。そうなる理由は、付属情報の効力が切れるからです。人は作者の行動、地位や人脈とか露出度も込みで作品を見ています。さっき並べた付属情報を、実際に当てにしているという。さらには、人柄の良さだとか、笑顔がステキだとか、講演がおもしろいとか・・・。しかし「去る者は日々にうとし」で、作品にはっきりした固有の特色がないと、後世の関心から外れていきます。 |
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――価格が十分高くない中堅の美術家は、早く忘れられてしまうわけですか? そこは逆かも知れません。はっきりした特色がある作品は、違和感、反感、敵視、無視で、鳴かず飛ばずだからです。例えば、ブラックとピカソの立体派(キュービズム)絵画。当時それら安物を山と買える資金を持って乗り込んだ日本の特使が、立体派を相手にせずに古典具象を買って帰国した悔恨のてんまつが、後に伝わっています。あの時に立体派をふろしきにいっぱい持ち帰っていたら、日本が誇るお宝になったのに、全く1枚も買わずじまいです。(編集注:立体派は新興絵画の中では強気価格で、投げ売りはやらず)。 |
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――史上最高値という絵が、よく話題になっていましたが? 高値記録は、オークションのはずみで生じます。はずみといえば、中古家電のネットオークションで、新品より高く落札した失敗談が一時話題でした。最後まで残った人の希望額で決定ですが、参加が2人きりでも最高記録は出るし、サクラがあおって高騰したりもあります。しかも美術では購入額がステイタスになる理由で、無駄に多く払うのを嫌わない購入者がいます。こうした事情で、無駄に、無意味にはね上がって、「困った参考価格」として国際市場を悩ませるケースもあります。ちなみに、困らせ役は日本です。原因は名前買い。 |
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――高額美術の世界はともかくとして、一般家庭で安くて良い絵を買えますか? 高額の絵を良い絵と考えるなら、その作者が駆け出しの安い頃に買えば、誰でもお宝を手に入れられます。立体派のようなチャンスをのがさなければ。 |
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――今さら時間は戻らないし、タイムマシンも持っていませんが? その絵のチャンスは、もう終わっています。新しい駆け出しの中から、新しく良い絵を探すことになります。立体派の次を探すわけです。 |
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――でも、安ければそもそも良い絵には見えず、わずかな関心さえ起きませんよね? やはりそうなるかも。人が絵を見る時、いくら中味に注目したくても、付属情報で絵から感じ取るものが増えたり減ったり、良くなったり悪くなったり、いくらでも動きます。良い悪いが同時に起きる例に、ヒトラー直筆の絵があります。 |
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――良い絵を見分けるのに、やはり目利きが必要ですか? 芸術作品は目利きをすり抜けます。目利きとは既存の良い絵に詳しい意味であって、新規の良い絵はその外に居るからカバーできません。立体派で起きたとおり・・・。ピカソに詳しくても、後期作品がわけがわからないクエスチョンのままの専門家もずいぶん多いし。抽象美術展に行けば、抽象がわからない人は内部関係者も門外漢も、同じ割合でいることに気づきます。 |
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――作品の好感度だけで決める方法は、だめなのですか? 実は好感度で絵を選ぶと、皆が同じあたりに集まります。右にならえしたみたいに。日本人なら、「海の見える風景」「花鳥風月」「富士山」「子犬」など幸福そうな写実画です。「好きな絵」が「好きな物」に一致しています。これでは立体派はとうてい選べないわけで。 |
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――そうした後世に残る絵を、何とか手に入れられませんかねえ? 理屈なら可能です。日本人の好みはまず風景画で、クセやアクが少なく一見して絵らしい絵です。一方、歴史的に残った名作は、まず人物画で、モダン以降は抽象。クセやアクが強くて違和感と興奮をもたらし、賛否が分かれる怪異な絵です。つまり世界的名作の特徴は、日本人の好みと正反対です。だから日本人なら、歴史に残る絵を当てやすいのです。もし正反対でなく少しずれている程度なら、かえって当たらない理屈です。日本人の目で見て、一番あってはならない絵を選べば○。妥協して二番を選んだら×。 |
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――ところで、絵を家に飾る習慣がなかった日本の事情は、今はどうなっていますか? 半分続いています。絵を室内に掛けない理由は、「食べるに事欠いた戦後が、文化面に残った説」や「狭い家にふすまや障子が多く、壁が少ない説」などが言われました。しかし本当は、「心動かされた美術体験がない」とか、「裏に怪しさが見え隠れして敬遠」あたりかも知れません。小さくて安い絵も多くあって、サイズ的な問題は元々小さいのですが。 |
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――入門向きには、版画が安くて手ごろと聞きましたが? 面積の割には安く済みます。ただ、現代の版画は美術の前線なので、少し知識が必要かも。銅版画や石版画がキャンバス画より安価なのは、20〜300枚は刷るからです。刷れば版を廃棄しますが、1990年代以降は、バレンやプレス機も使わず、プリンターで印刷する電子版画が現れました。 |
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――コンピューターとプリンターで印刷したら、美術になるというだけでびっくりですが? 自称アートの印刷物は必ず真物の美術になり、版画に分類されます。版画の正体は各時代の印刷物だからで、電子プリンターもプレス機の一種になります。絵はコンピューターで作り、簡単な手法だとペイントソフトで画面上にかきます。複雑な手法は、プログラムに長時間計算させます。これらを紙などに印刷したダイレクト・プリントが、デジタル絵画やコンピューター・グラフィックス絵画です。分類は版画。 |
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――CGと版画は、まるで反対のものに聞こえますが? CGと聞けば未来ファンタジーでメカニカル、版画と聞けば伝統的ロマンでヒューマン・・・。版画と呼ぶ方が、お宝の重みが出ます。CGと呼ぶと若い分野に感じられ、骨董的な価値が薄い気がするのは日本の感覚でしょう。 |
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――CG版画は、いつ頃からあるのですか? 実はCG版画の歴史は案外古く、大型汎用コンピューターの時代からあって、以前にピュリツァー賞の世界報道写真展の会場でも見ました。プリンターがない頃なので、ブラウン管モニターをカメラで撮影していて、だから当時は写真カテゴリーに分類されていました。 |
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――そこから、どんどん進化していったわけですね? 美術としての完成は、小型コンピューターが高速化した1997年頃です。ところがそのCG、当初は住宅マンションの完成予想図や、サイエンス雑誌の説明イラストなどで消費されました。だからか、CGといえば使い捨てっぽく聞こえます。 |
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――ゲームや映画でも、CGが早くから活躍していますが? ゲーム、映画、テレビコマーシャルのCGは、主にアニメ動画です。トリック撮影やスタントシーンが安上がりに作れるのがメリットで。この部分的、補助的な役目も、CGの語感ニュアンスに作用したでしょう。 |
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――しかし語感だけでなくCG画自体が、いかにもCGっぽくてクセがありますね? 傾向として、油絵は重く軟調ですが、CG版画は軽く硬調です。例えば、宇宙望遠鏡が実写した天体の電送写真と、CGによる想像図では、リアリティーに大差があります。同じデジタルなのに、CGだと見るからに人工的、ドライ、クリーンを感じさせ、それが「コンピューターくささ」になっています。(編集注:実写と見分けられないほと精巧なCG画は、ハイテクの発達によって現れるのは時間の問題)。 |
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――CG版画を買う時、何に注意が必要ですか? まず価格。安い方から見ていくことです。CG版画は美術の末っ子なので、本来高くはないはずで。再発もありうる音楽ソフトと似て、原理的に追加印刷ができるから、高額なわけはありません。音楽のインディーズ・レーベルCDの掘り出し物探しが似ています。 |
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――CG版画は、将来の値上がりが期待できますか? 海外で過去のCG作品が値上がりしていますが、これは数が少ないせいもあります。受注生産方式が中心だから、現実には石版画などよりずっと少ない枚数しか実在しません。まとまった枚数を先に刷ってしまう手刷り版画より、CG版画はレアになります。昔、郵便局で売れ残った不人気な記念切手が後に高騰した現象が、海外のCGで起きています。 |
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