現代美術とCGアートの謎と疑問に答えるQ&A もくじ
電子美術館のQ&A

35 これでわかった電子美術 2

二十一世紀国際地方都市美術文化創造育成活性化研究会
2010/3/5

――再確認しますが、CGジクレーと油絵ジクレーは、どう違うのですか?

共通点は、インク吹き付けプリンターです。異なる点は、CGジクレーはCGデータからダイレクト印刷し、油絵ジクレーは油絵を撮影しての印刷。つまり油絵には、撮影作業が加わります。CGジクレーは高い確率で版画ですが、油絵ジクレーは版画と複製画の二つに分かれます。

――CGジクレーと、油絵ジクレー版画を比べた場合、その二つは価値が同じなのですか?

価格は同じだと思いますが、ただ同じ版画でも厳密な呼び方は変わります。CGジクレーは「オリジナル版画」、油絵ジクレー版画は「非オリジナル版画」になります。ちなみに、油絵ジクレー複製画は版画ではないので、非オリジナルであることを言う必要がありません。

――また、新しい言葉が出てきましたね?

この区分も古くからあります。版画の用語に、オリジナル版画と非オリジナル版画があります。独自作風の意味ではなくて・・・。画家が油絵を描いて、それをセルフコピーで版画に彫り直して量産することがあります。これが非オリジナル版画です。一例はムンクの『叫び』で、油絵の後で木版画などにセルフコピーしています。

――非オリジナルよりは、オリジナルの方が値段が高そうに思えますが?

ジクレーの新品価格は、印刷コストでだいたい決まります。ところが油絵ジクレー版画は撮影工程が加わるから、単純コスト積み上げだと値段が逆に上がる理屈です。それは購入者にはおもしろくないので、同じ印刷法で同じ面積なら、同じ価格にする店が多いわけです。

――電子版画は、ひとつの作品で何枚ぐらい作られるのですか?

無限に作れる理屈ですが、実際には1枚も作られない作品が大半です。手刷り版画のように20枚なり300枚なり刷ってマーケットに出すのではなく、受注生産としている店が多いからです。

――でも、1億枚の受注があれば、1億枚作れるわけですよね?

その場合、1枚にサインと日付を書くのに30秒かかったとして、それだけで94年かかります。長寿薬の発明が必須。問題は印刷の方で、1枚に30分として5700年かかります。そこまでの長寿は、今後もたぶん実現しません。

――子々孫々受け継げば、1億枚でも印刷できませんか?

オリジナル版画も非オリジナル版画も、子孫が刷れば「後刷り版画」という、格落ち版画になります。生きている作者の監修で印刷された分よりも、価格はガクンと下がります。

――なるほど、後世の人が版を入手しても、生前の版画と同等には作れないのですね?

手で刷る銅版画や木版画も、同じ扱いを受けます。例えば遺品の木版に別人が絵の具をのせて、後刷り版画を作ることがままあります。赤の他人でなく、作者の近親者に後刷りさせて、由緒をつける作戦もあって。

――本当に、ずいぶんややこしいのですね?

従来の一品美術の感覚に一番近い印刷物は、存命美術家の指示や、本人が直々に印刷した「オリジナルCG版画」です。逆に一番遠いのが、ゴッホの油絵を後で他人が撮影した「複製画」です。この二つが両極端になります。それでも両方とも美術作品です。

――CG作品を後世に印刷した他人が、ウソの日付を書けば、生前の作だと偽れませんか?

手刷り版画の「カタログ・レゾネ」と同様に、電子版画にも戸籍簿があります。公的なものではありませんが、CGを手がける作者は、コンピューターに特別詳しいから、作品データベースで制作物一覧と販売分を全て記録しているはず。

――版画の世界にも、インチキを防ぐたくさんのルールがあるわけですね?

原理上、無限に刷れるのは、後刷り版画です。価値が十分大きいのはそれではなく、作者の生存中に発注があった分に限られます。そして、売り絵の量販ルートにでも乗せない限り、オリジナルCG版画は非常に数が少ないのです。

――それならオリジナルの電子版画は、価格高騰も起きるわけですか?

十分考えられ、欧米の美術館は安いうちに買い込んじゃえと、プリンター印刷美術のコレクションに走り出しています。日本の出遅れ方は、もちろんここにも響いています。

――手刷り版画は1枚ごとに微妙に色乗りが違うことがありますが、電子版画はどうですか?

一度に連続印刷すれば、見分けがつきません。ところが翌日の印刷分は、もう色や濃度が違います。またプリンター交換で、画調はガクンと変化します。さらに6色インクが、製品ごとに追加色がブルー系だったり、オレンジだったりして色傾向が異なります。

――印刷する人の腕で、出来の良し悪しは生じますか?

むしろ、印刷機の性能で画質が決まります。その次に画質を左右する要因は、紙です。理想は写真用光沢紙ですが、マット紙では微妙な細部がやや見えにくくなります。

――写真ペーパー以外に、印刷用紙があるそうですが?

キャンバスの凹凸テクスチャーを模した美術布もあって、これだと細かい描画部は不明瞭になりますが、凹凸の味が出ます。塩ビシートだと、また変わりますが、暗部が落ちます。これらは作風に合えば効果が出るし、注文時に選べます。

――紙質の影響を受けやすい絵があるのですか?

例えば、「白いテーブルの上に白いハンカチを置いた絵」や、「暗闇の中に黒い人影が見える絵」です。白の中の白、黒の中の黒は埋もれやすく、再現性の高い写真用光沢紙が理想です。

――全く同じ電子版画を、2人が持つ可能性はあるのですか?

並べて見比べると少し赤っぽい、青っぽいなど色傾向が違い、コントラストも違うでしょう。印刷業者はプリンターを償却し交換するから、そのたびに味の違いが出ます。

――サインもいっしょに印刷すれば、同じものが量産されませんか?

デジタルサインでも、位置を変えたり字体の変化で、別物にできます。1枚1枚の作り分けは、電子版画では容易です。ちなみに、サイン類をいっしょに印刷すれば、後から手で書き足せないので、プレミアムになります。印刷日や受注店名やマークがあると、後刷りとの区別もつくからです。

――絵の中味自体は、さすがに全部が同じですよね?

実は違います。作者が作り直すからです。また例えば私の場合、版の画像は一種の目標指示だから、紙タイプに合わせて印刷ごとに補正します。元の版のまま印刷してもNG。また、絵と額のタテヨコ比の差を埋めるマージンを加える、その大きさが企画ごとに違います。海外輸出だと、国別に郵便で送れるサイズ制限があって、別物になります。

――そういえば、電子美術は印刷サイズが自由に変えられましたね?

サイトで販売するレギュラー作品でさえ、タテヨコ寸法は大小何種類も用意します。壁画のような特大サイズ向けに、カスタムオーダー販売も用意されます。

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