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電子美術館のQ&A

74 文明は源氏物語よりも長生きか

二十一世紀国際地方都市美術文化創造育成活性化研究会
2011/12/20

――『源氏物語』が書かれて、今年は千年だったそうで?

紫式部なる平安人の著書『源氏物語』は、世界初の私小説ということです。公表が1001年以降なので、千年記念のイベントがここ何年か続きました。

――千年といえば、人類史の中で長い時間なのですか?

人類発祥は300万年前で、恐竜絶滅の6550万年前よりずっと後のことです。さらに文明の新しさは驚くほどで、フランスのラスコーやスペインのアルタミラの洞窟絵画は、1万8500〜1万5千年前にすぎず、世界的に古い日本文明史でも、わずか1万2千年です。しかも機械化を始めてまだ300年、ハイテクはたったの60年。短時間に立ち上がった文明を思えば、恋愛小説の千年はけっこう長い時間でしょう。

――人類はこの先、何年ぐらい『源氏物語』を読めますか?

最長で50億年です。この限界は太陽が燃え尽きる現象で、核融合爆発で水素がより重い元素に置き換わって、太陽は小さく冷たい恒星に変化します。途中で爆発が活発化するので、地球より外の火星の位置まで届くジャンボ太陽になります。いわゆる赤色巨星ですが、太陽は軽量化で引力が弱くなり、地球は遠ざかって埋没しないでしょう。しかし気温はいったん異常に上がります。これが50億年先だそう。

――それまでに人類が宇宙へ脱出すればいいのですね?

人類はすでに宇宙遊泳や月面探査、無人でも惑星撮影と火星探査、また宇宙ステーションの常設も続けています。最近各国が宇宙開発を急ぐようにみえるのは、国威発揚と資源獲得競争もありますが、人類の確実な滅亡は50億年より早い7万年説が有力だから、手をこまぬくことなく急ぐとも受け取れます。7万は50億の7万1千分の1です。

――7万年たてば、何が起きるのですか?

氷河期です。動物の中には、野生系と家畜系に分かれた種があります。オオカミとイヌ、ヒョウとネコ、イノシシとブタ、マンモスとゾウなど。このマンモスの最新個体は1万年少し前の氷づけで、タイミングが文明開始の1万2千年前とだいたい一致します。

――つまり前の氷河期が終わると同時に、文明がスタートしたわけですか?

そうだとしたら、今の「間氷期」が終わった寒の戻りで、文明が終わる可能性があります。でも危機の訪れはもっと早いかも。例えば人類の自滅タイマー説です。一昔前の人類滅亡説は核戦争で、最近は食料不足と水不足、それに石油などの資源枯渇も・・・。私が注目するのは人間不要です。

――何が理由で、人間がいらなくなるのですか?

コンピューター関係の仕事で気づきました。まず新OSがつくられ、新型パソコンが発売。パーツやソフトも新登場。当然、誰かがそれを考案し製造し収入を得て暮らします。

――そうした需要は、長続きしないのですか?

パソコン界の爆発的な繁栄が始まったのは、1995年です。が、98年にはもう縮小。売れても、もうからない事態・・・。一因は、機材の進歩によるトラブル激減です。以降の進歩を加速したヒーローのひとつが、USBインターフェース。デジタル信号を授受する小さなプラグで、高速伝達と自動化が特徴。広義のインテリジェント・ロボットです。

――USBのおかげで、今や誰でも簡単に外部メモリやスキャナなど周辺機器を使えますね?

USB以前は一長一短な接続法が複数あって、トラブルだらけでした。この着々と進む合理化をみて、しかし私は文明の運命を思いました。合理化の顔といえるUSBですが、結果はパソコン関連ショップが不要になり、市販マニュアルも不要、パソコン教室も解散。店員も先生もクビです。

――それは、パソコン製造だけの特殊事情ですか?

同じ合理化が、社会の全分野の全業界で進んでいます。LSIが与える影響に限っても、例えば手分けして何かを探したり数える作業は、OAマシーンで自動化され、人が余る理屈です。余った実例が、パソコンとプリンターで実現した、弁護士事務所の人減らし。従来3人要した作業が1人でできます。だから2人はクビ。

――余った人が、OAマシーンを作る会社に再就職したら済みませんか?

言葉で釣り合わせるのは簡単ですが、「済む」が言えるのはプラスマイナスが等しい場合です。100人がクビで99人が再就職でき、1人が失業したまま。これを繰り返せば、いらない人間がどんどん、どんどんたまります。

――100人中99人しか雇われない理由は何ですか?

他の組織も、他の業界も、人減らしするからです。みんなが減らそう減らそうとすれば、釣り合うわけがありません。人類の目標が、社長と平均10台のロボット組織の実現だとすれば、結果はわかっているわけで・・・

――今まさに各国企業は、競争するように人減らしを行っていますが?

先日2011年10月31日に、人類は人口70億人を超えました。もし理想組織が実現済みとすれば、世界に会社が1億あり、10億台のマシーンが働く構図。マシーン製造で別に2億人いて、役人が1億人の計4億人がプロになれて、その家族16億人を加えた合計20億人が食える人です。残りの50億人は、生活保護を取得しようとがんばる毎日。

――ものが売れないという、今起きているとおりですね?

1億社の顧客は20億人が主で、50億人は商品をあまり買いません。自動車などは、早くも2000年代にこの構造不況を先取りしています。実際に日本でも、自動車所有が禁じられる身分が増えているそうで。この話は千年後なんかではなくて、もっと近未来の描写になっているのかも。

――でも今、世界の失業率が絶望的なほどは高くないのはなぜですか?

人類の文明が、まだUSB3のレベルだからです。ハイテクが始まってまだ60年の還暦で、合理化の途上で中途半端な状態。近年、テレビやパソコンの画面がブラウン管から液晶へ移行しましたが、これでまた世界で多くが失業です。

――新製品は少ない作業人数で作れるように、必ず合理化されていますからね?

先進国の合理化プランを予想するなら、電気ガス水道の無人検針、AIによる無人相談窓口、郵便も宅配もじりじりと無人化。食べる野菜や魚も、クローン技術でコンピューターとロボットが栽培育成。例外的に合理化を目指さない分野は、落語や絵画など1人でやる創作表現ぐらいかも。

――世界の人口爆発を抑制しても、解消しないのですか?

人口は関係ありません。人が増えすぎて余ったのではなく、文明の発達で人手がいらないのです。キーワードは「70億」ではなく「USB」です。

――みんな、この問題に真剣になっていませんね?

年配者は、現代社会の希薄な人間関係を憂慮しますが、心の問題ではなく現実に人がいらなくなってきているのです。第一これは新ネタではなく、蒸気機関の完成(1769年)以後言われ続けました。今はまだ人手を頼る分野が点々と残るから、「ほかの仕事もあるよ」と言える・・・。日本では介護もそう。でも今開発中の人型ロボットは、最初から介護や介助の機能を目指しています。こうして人手をなくす行動のみあって、人手を増やす行動はひとつもないから、いずれ人間のほとんどが生きた粗大ゴミになる理屈です。

――でもですね、人の役割がなくなって社会が崩壊しても、人類の絶滅まで行くのですか?

いい質問です。私の想像も国家の崩壊までです。ただし、成功ビジネスモデルや消費ブームでの反証は無意味でしょう。景気の上がり下がりは20年スパンのうねりであって、200年スパンでは人間不要の流れのみ存在します。20年について論じても関係なし。それでも最終結末が読めないのは、途中で乱世が予想されるからで。

――地球規模で、ゴタゴタが始まるのですか?

知力や体力が劣らないのに粗大ゴミにされた側は、社会システムを壊そうとするはず。50億人から出た有志が、20億人を襲撃する・・・。世界同時フランス革命って感じで。今や各国に強大な犯罪結社やカルト団が複数あり、有志の出身元はそこかも。自滅タイマーの珍説を補強する材料は、着々とそろいつつあります。

――そんな状態で温暖化問題などを解決できるのか、心配になってきましたが?

人間不要のまま地球環境事変のハードルを越えられるかの問題です。個人同士が敵対した関係で何ができるかという。憎しみの間がらで、生まれるものは何か。卑近な現代日本で、国政から小企業まで、簡単な仕事でもコケてコケてする現状がいい例でしょう。弱者は粗大ゴミ化を恐れて同輩の活躍を嫌い、強者は粗大ゴミ化を恐れて弱者の活躍を嫌い、縦も横も足引きと責任回避の不和で、チーム総力が著しく落ちているからです。原因は人の価値の低さにあって、USBを進化させる組織以外はそうなるのです。

――子どもの頃、世の中の合理化を目にしては、何かと感心したものですけどねえ?

私は疑問でした。中学1年ではバス通学でした。中央ドアに車掌さんがいて、ドアの留め金をガチャンと手で外して開閉し、マイクでアナウンス、手で整理券を渡していました。そのうちレバー式電動ドアと、整理券発行機が備わり、やがてワンマンバスに総チェンジ。人はどこへ行っちゃうのだろう、と。今から思えば、これはトランジスターやサーボモーターなどハイテクの力だったのです。

――全ては、資本主義の市場原理が元凶なのでしょうね?

その上位にあるのは、より良い物を生み出す力です。人のこの能力を生かして「作る人を減らす」「買う人を増やす」を皆でやったら、作る人と買う人は実は同一人物なので、合成の誤謬(ごびゅう)で論理矛盾が起きたわけです。

――社会を運営する仕組みにも、問題はないのですか?

ベーシックインカムの主張が、文明の運命も動機にしているかは知りませんが、運命自体は制度の設計ミスで起きた人災ではありません。機械にできることが増えるから、人間がいらなくなるだけの話です。文明国ほど少子化が激しい現象も説明がつくわけで。自滅タイマーが、ことの主役として浮かび上がってきます。人類は太古のある時点で野生系から家畜系に交替して、一度は延命に成功したのですが・・・

――人類は、なぜ自滅タイマーを持つのですか?

生物の永続防止かも。恒星一個と同様に、生物一種も自然消滅する原理は、前に出した「美術様式の時間変化」を考えた時にも思いました。美術作品に表れる芸術性は尻上がりには上昇せずに、ピークの後ダウンします。美術は一様式ごとに一生があるようです。「祇園精舎の鐘の音(こえ)」は、人のやること全てについて回るようで・・・

――でも、いったい誰が万物の自滅をセットしたのですか?

自然科学の最終テーマがそれです。宇宙の摂理を仕組んだ者、神に相当する支配者は誰か。摂理ごと偶然だろうと私は思っていたのですが。私たちはUSBを捨てないで持ったまま、タイマーを止めるヒントが欲しいのです。

――人類が宇宙空間へ脱出して延命する行動は、神にとって想定内なのですか?

ことによると想定外かも。宇宙へ脱出しても絶滅なら、人類は地球と切り離せなかったと、わかりやすい結論です。しかし、やってみないとわからない。人類の運命は、神に反逆したアヴァンギャルドな飛躍をやってみて変わるかも知れません。これは芸術創造の論理と同じで、惰性を断ち切って予定調和を破壊し、トンデモをおっぱじめて、やっと人の存在意義ができる筋書きです。人類にとって芸術行動とは、生き延びるための最終兵器だったのかと・・・

――確かに、地球に引きこもって絶滅するぐらいなら、困難でも宇宙へ出た方がましですね?

もちろん現時点では、人類は宇宙で自活できません。月へは4日で行けても、火星へは2年かかって道中に食料難が起き、現地でも食料をつくれないから、当面は地球から補給が必要です。アメリカ航空宇宙局は近く、火星へ行って二度と帰らない飛行士を募集するそうで。惰性を断ち切って、破壊と創造がスタートします。

――それに応募して火星に移るとしたら、自分の美術作品を持って行きますか?

持っていくなら、まあ『源氏物語』にしましょう。現代訳ごと一式で。ついでに、「諸行無常の響き」が聞こえる『平家物語』も持っていきましょう。

――ところで今なぜ、絶滅の話なのですか?

電子絵画で、人類が存亡の危機を乗り越えるモチーフを考えた時でした。電子絵画はプリントオペレーターなど人手を増やし、キャンバス画より大幅にコストアップします。合理化に走る文明に逆行しているから、ちょっと気になったのです。

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